佐久市の病院が羊水塞栓症による出血性ショック事案で提訴される(報道)
「2012年7月に横浜市の主婦(当時34歳)が、佐久市の○○病院で長男を出産後、出血性ショックで死亡したのは医師の処置に過失があったとして、横浜市の主婦の夫(36)と長男(1)が22日、同病院を運営する佐久市に総額約7500万円の損害賠償を求める訴えを横浜地裁に起こした。
訴状によると、主婦は12年7月20日に同病院で長男を出産後、大量出血して心肺停止状態になり、出産から7時間20分後に死亡した。死因は羊水塞栓(そくせん)症による出血性ショックとされた。
原告側は、担当した医師が、産科関連学会の設けた大量出血時の対応を示したガイドラインに基づく輸血などの措置を迅速に取らなかったため、「出血が続き死亡する結果を招いた」などと主張している。
訴えに対し、○○管理者は「訴状が届いていないが、病院としては手を尽くして診療にあたった。裁判の過程で疑問点などの説明を尽くしていきたい」とコメントした。【武田博仁】」
損害賠償訴訟は,原告の住所地を管轄する裁判所に提訴することができます.
民事訴訟法第4条は 「訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。」と定めていますので, 被告の住所地を管轄する裁判所に提訴することができます.
また,民事訴訟法第5条第1項は,「次の各号に掲げる訴えは、それぞれ当該各号に定める地を管轄する裁判所に提起することができる。」とし,「一 財産権上の訴え 義務履行地」と定めています.
損害賠償債務は,持参債務(債務者が債権者の住所地に支払いのために赴く)ですので,債権者(原告)の住所地が義務履行地となります.そこで,原告の住所地を管轄する裁判所にも提訴することができるのです.
原告が便利なほうを選ぶことができます.
なお,民事訴訟法第17条は,「第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。」と定めていますので,裁判所の判断によっては,移送されることもあります.ただ,実際上,原告の住所地の裁判所で審理することが「訴訟の著しい遅滞」をひきおこすことは少ないでしょうし,移送することが「当事者間の衡平を図る」ことになる場合も少ないでしょう.
谷直樹
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