静岡地裁浜松支部平成25年11月26日判決、歯科医療過誤(インプラント)本人訴訟で195万円賠償認容(報道)
「顎の骨にインプラント(人工歯根)を埋め込み、人工歯をかぶせる歯科治療で、神経損傷、感染症などのトラブルや民事訴訟が県内を含む全国で増加している。リスクが高く高度な技術が求められる治療にもかかわらず、患者に否定的な情報を十分説明していないなど、歯科医のモラルが問われるケースも目立ち、早急な対策が求められている。
浜松市南区の50代女性が、市内の歯科医に誤った治療をされたとして損害賠償を求めた訴訟の判決が11月26日にあり、静岡地裁浜松支部は歯科医に195万円の支払いを命じた。弁護士を立てない本人訴訟だったが、裁判所は過誤を認めた。女性は、ずさんな治療が横行していると憤る。
判決や女性によると前歯の治療でインプラント本体を誤った位置に埋め込まれたため、激しい頭痛や顔面が腫れて食事も外出もままならない日が続いた。治療した歯科医は「失敗ではない」と主張したが、その後に受診した7カ所の歯科医院すべてで「撤去が必要」と診断された。「誰かが訴えなければ、被害者が増え続ける」と訴訟を決意したという。
日本顎顔面インプラント学会の指導医で、浜松医療センター歯科口腔(こうくう)外科の内藤克美科長は、他の歯科医院の患者10人以上から、治療後の神経障害やインプラントの脱落などの相談を受けた。「インプラントはあくまで失った機能を補うもので、天然の歯とは違うということを患者側も理解しておく必要がある」と指摘する。一方で多発するトラブルの原因は「治療者側の知識と技術、モラルの欠如が大半」と警鐘を鳴らす。
「発展途上の治療」
県歯科医師会の望月亮医療管理部長と五井卓生涯研修部長は「インプラントのおかげで入れ歯から解放され、喜ぶ人もいる」としながら、体系的な教育や技術の標準化はこれからで、発展途上の治療と指摘する。
骨と歯の間には歯根膜という緩衝材があるが、インプラントと骨の間にはない。2人は「長期的な骨への影響は分かっていない」と懐疑的。「歯科医は説明責任を果たし、患者は納得いく説明をしてくれる歯科医にかかってほしい」と訴える。
浜松医療センター歯科口腔外科の内藤科長は歯科医の増加で保険診療だけでは経営できず、高収益目当てで自由診療のインプラントを行う歯科医の存在も否定できないと指摘し、「監視する第三者機関が必要」と提言する。
歯科関連訴訟の情勢 裁判所の統計によると、2012年に全国の地裁であった医事関係訴訟は歯科が86件で、内科、外科、整形外科に続いて4番目に多かった。00年の39件から2倍以上に増えた。医療法学が専門の大磯義一郎浜松医科大教授によると、一般の医療過誤訴訟は原告の勝訴率が低下し、訴訟自体も減っているが、インプラント関連の訴訟は増加し、約8割で原告が勝訴した。治療の過誤が認められなくても、説明義務違反が認められるケースが多いという。」
本件は、弁護士を代理人とせずに、被害者が、自分自身で医療裁判を提訴・遂行し、勝訴しています.
このように、弁護士を代理人とせずに、自分自身で医療裁判を提訴・遂行することもできます.
とくに比較的少額の被害の場合には、弁護士費用を考えると、本人訴訟ができる人であれば、そのほうが経済的に合理的です.
医療事件は原告(患者)側に立証責任が科せられる関係で困難ではありますが、医療被害を受け、過失・因果関係を立証できる見込みがある場合は、あきらめずに、権利を行使することが大事と思います.
なお、本人訴訟を行う場合は、医療事件に詳しい弁護士に早期に相談し、提訴前、そして提訴後にも適時助言を得たほうがよいでしょう.
谷直樹
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