茨城県の病院,スタンバイにした人工呼吸器の開始忘れ事故で,看護師に罰金50万円の略式命令(報道)
「茨城県日立市城南町の日立総合病院で2008年、入院中の男性患者(当時76歳)が、人工呼吸器の酸素供給を止める「スタンバイモード」にされたまま放置されて意識不明の重体となる事故があり、日立区検が女性看護師(32)を業務上過失傷害罪で略式起訴したことがわかった。
男性は事故の約2か月後に死亡した。起訴は17日付。
起訴状などによると、看護師は08年12月31日、心臓疾患で入院していた男性の気管にたまった痰(たん)を除去する際、人工呼吸器をスタンバイモードに切り替えたまま退室し、約40分間放置したために心停止させ、低酸素脳症の傷害を負わせたとされる。
男性が急に意識不明となり、亡くなったことを不審に思った遺族が09年4月、日立署に相談。県警が今年2月、業務上過失致死容疑で書類送検したが、検察は「死亡との因果関係までは問えない」と判断した。捜査関係者によると、看護師は調べに対し、「以前から日常的にスタンバイモードに切り替えていたが、この日は戻すのを忘れた」と話しているという。」
毎日新聞「呼吸器操作ミス:日立総合病院の看護師に罰金50万円略式命令」 (2013年12月25日)は,次のとおり報じました.
「日立市城南町の日立総合病院で2008年、男性患者(当時76歳)の人工呼吸器を止めたまま放置し、低酸素脳症を負わせた事件で、日立簡裁(織田啓三裁判官)は、業務上過失傷害罪で略式起訴された女性看護師(32)に罰金50万円の略式命令を出した。命令は18日付。【玉腰美那子】」
医療事故情報収集等事業医療安全情報No.37「スタンバイにした人工呼吸器の開始忘れ」(2009年12月)は,「スタンバイ」のまま患者に人工呼吸器を装着したため換気されなかった事例が4件報告されていたとのことです.
「事例1
患者は自発呼吸をサポートするために人工呼吸器(Servo i)を装着していた。看護師Aは、患者の体位を変えるため、人工呼吸器のモードを「オン」から「スタンバイ」に切り替え、看護師Bと共に患者の体位を変えた。その後、看護師Aは、人工呼吸器のモードを「スタンバイ」から「オン」に切り替えず退室した。しばらくして、看護師Aが患者の病室に入ると、人工呼吸器による換気が行われていなかった。
事例2
患者はトイレに行くため、一時的に人工呼吸器(Servo i ユニバーサル)をはずし、経鼻的な酸素投与に切り替えた。その際、看護師Cは、人工呼吸器のモードを「スタンバイ」にした。その後、患者がトイレから戻り、看護師Dは患者に痰の吸引を行い、人工呼吸器を装着した。この時、看護師Dは、人工呼吸器のモードを「スタンバイ」から「オン」に切り替えるのを忘れた。」
再発防止についての総合評価部会の意見は,「人工呼吸器を装着する際、換気が行われていることを胸郭の動きに基づいて確認する。」というものです.
医療に対する刑事罰については,医療行為の萎縮を招く等の理由で消極的意見もあり,議論が絶えませんが,このような事案について刑事罰(罰金)を課すのが医療行為の萎縮を招きそもそも不適切なのか,慎重に検討すべきと思います.
弁護士 谷直樹
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