村上春樹氏の「ドライブ・マイ・カー」に中頓別町町議が質問状
「月刊誌「文芸春秋」が昨年12月号に掲載した作家村上春樹氏の短編小説「ドライブ・マイ・カー」に、宗谷管内中頓別町ではたばこのポイ捨てを「普通にやっていることなのだろう」という記述があり、同町の町議有志が「町民には屈辱的だ」などとして文芸春秋に質問状を送ることを決めた。
小説は、主人公の俳優が同町出身の24歳の女性を専属運転手として雇う内容。女性が火の付いたたばこを車の窓から投げ捨てる場面で、主人公の感想として「たぶん中頓別町ではみんなが普通にやっていることなのだろう」と記されている。
この記述に宮崎泰宗(やすひろ)町議(30)らが反発。質問状で、町の9割を森林が占める中頓別では山火事防止や環境美化の意識が高く、たばこのポイ捨てが少ない現状を説明。町名を載せた理由をただし、「実在の町名を使うなら、住民の暮らしぶりや環境整備の取り組みを取材していただきたかった」と要望した。
2月中の回答を求め、7日までに内容証明郵便で発送する。」
村上春樹氏の小説「ドライブ・マイ・カー」に,中頓別町出身の運転手渡利みさきが,タバコを窓から捨てた際,(渡利みさきが中頓別町町について一年の半分近く道路は凍結していますと述べたことから)作中人物が「たぶん中頓別町ではみんなが普通にやっていることなのだろう」という感想をもった,という趣旨の描写があります.
これについて,中頓別の町議が問題にしたわけです.
中頓別町でタバコポイ捨てをみんなが普通にやっていることというのは,作中の人物の感想にすぎません.
そもそもタバコポイ捨てをみんなが普通にやっている町などあろうはずがありません.
作中人物が敢えてそのように事実に反することを思うのはなぜでしょうか.
それはタバコポイ捨てをするドライバー渡利みさきを非難する気持ちを消し去ろうとするためと思います.
他人を非難することをやめようとする作中人物の考えが現れているところです.
これが重要な伏線になっています.
事実に反することが書かれているからダメだというのではなく,事実に反する仮定をしてもドライバー渡利みさきを非難したくないと思う作中人物の気持ちを考えるべきでしょう.
小説を読むということはそのように人の気持ちを推察することでしょう.
とすると,この町議の対応はいかがなものでしょうか.
北海道新聞「村上春樹氏「ポイ捨て」修正 北海道・中頓別の有志が納得 「町に足運んで」と返信」(2014年2月19日) は、次のとおり報じました.
「【中頓別】月刊誌「文芸春秋」が昨年12月号に載せた村上春樹氏の短編小説「ドライブ・マイ・カー」の中の、宗谷管内中頓別町ではたばこのポイ捨てを「普通にやっていることなのだろう」とした記述に同町の町議有志が反発し、文芸春秋に質問状を送った件で、同社から回答書が届いた。有志はこれに納得し18日、「回答書のお礼」と題した文書を同社に送り、決着した。
村上氏は既に7日、この件を「心苦しく、残念」とし、単行本収録の際は「町名を変える」などとする見解を発表。10日付の同社からの回答書は、この見解全文を記した上で「付け加えることはありません」とした。
これに対し、町議有志は、回答に感謝し「(村上氏に)迅速かつ誠意あるご対応をいただいた」「(中頓別に)足を運んでいただけたら幸いです」などとする文書を発送した。」
【追記】
弁護士 谷直樹
ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
↓

にほんブログ村