弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

大学病院,全身麻酔・鎮静剤プロポフォールを2歳児に使用し,死亡事故(報道)

東京女子医科大学病院は,2014年3月4日,「予期しない死亡事例の発生について」をサイトに掲載しました.

「このたび、当院において予期しない死亡事例が発生いたしました。患者様及びご遺族の皆様に多大な苦痛とご心痛を与えてしまいましたことに、深くお詫び申し上げます。

事例の概要につきましては、平成26年2月18日に実施された2歳代の幼児に対する頸部手術(リンパ管腫ピシバニール注入術)後の全身麻酔・鎮静用剤を用いた集中治療管理を行い経過観察中、平成26年2月21日に急性循環不全となり、ただちに蘇生処置を行ないましたが改善することなく永眠されました。

すみやかに本事例に係る院内調査検証会を開催し検討したところ、現時点では鎮静に用いた「プロポフォール」が作用した事が疑われました。

早急に外部評価委員を加えた医療安全管理特別部会を開催し、より詳細な検討を行います。

今後、本院の診療に対してより一層医療安全に努めてまいりますとともに、今後も経過を報告いたします。

なお、この公表につきましては関係官庁等への報告とご遺族の了解の下で行っております。」

プロポフォールは,マイケル・ジャクソン氏の死亡で有名になった全身麻酔・鎮静剤です.
劇薬です.
小児(集中治療における人工呼吸中の鎮静)への投与は,添付文書では,禁忌とされています.添付文書の記載は,これに従わなかったことにつき特段の合理的な理由がない限り,医師の注意義務の内容となります.本件において,添付文書の記載事項を遵守することを妨げる特段の合理的な理由がない限り,注意義務違反が認められます.
どうしてこのような薬剤が2歳児に使用されたのか,事実を解明し,有効な再発防止策を提案していただきたく思います.

【追記】

毎日新聞「東京女子医大:死亡男児の両親、被害届提出へ」(2014年5月22日)は,次のとおり報じました.

「東京女子医大病院(東京都新宿区)で2月に首の手術を受けた後に死亡した埼玉県内の男児(当時2歳)の両親が22日、厚生労働省で記者会見し、「死亡は医療ミスが原因」として警視庁に近く被害届を提出すると明らかにした。

 両親や弁護士によると、男児はリンパ管の手術を受けた後、集中治療室(ICU)で人工呼吸器を使って呼吸管理中に鎮静剤「プロポフォール」を投与され、3日後に死亡した。同剤は人工呼吸中の小児に使用してはならないとされるが、大人の許容量の約2.7倍が投与された。病院は火葬後に警視庁に届け出ており、異状死の24時間以内の報告を義務づけた医師法にも抵触するとしている。

 両親は「警察による司法解剖を逃れ、原因究明をうやむやにしている。ICUで麻酔をかける説明もなかった」と批判した。

 病院側は、院内の部会で検証し厚労省に経緯を報告するとした上で「警察への報告も適切に行った」とする永井厚志病院長名のコメントを発表した。【神保圭作、松本惇】」


日本テレビ「医療事故で2歳児死亡 両親が被害届提出へ」(2014年5月22日)は,次のとおり報じました.

「今年2月、東京女子医科大学病院で2歳の男の子が、死亡した医療事故で、男の子の両親が22日に記者会見し、警視庁に被害届を提出することを明らかにした。

 亡くなった男の子の父親「(病院からは)温かい言葉一ついまだにかけていただいておりません。皆さんのお力で、警察のお力で、この子がなぜこんなことになってしまったのか、それを解明していただきたいんです。その気持ちだけです」

 22日に会見したのは、東京女子医科大学病院で、2月に死亡した2歳の男の子の両親。男の子は、首のリンパ管の手術後、子どもへの使用が禁止されている麻酔薬「プロポフォール」を3日間投与され、その後、死亡した。

 会見で両親は、医師がこの麻酔薬を投与した理由を知りたいと述べた。また、薬を投与した後に心電図などに異常が出たのにもかかわらず、病院側が対応しなかったことや、死亡診断書で「病死・自然死」とされた点も納得できないとして、今後、警視庁に被害届を提出することを明らかにした。」



弁護士 谷直樹

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by medical-law | 2014-03-06 00:59 | 医療事故・医療裁判