長崎地裁平成26年3月11日判決,急性心筋炎を疑い転送すべきと病院の責任を肯定(報道)
「長崎県新上五島町の上五島病院で2010年、入院中の女子中学生=当時(13)=が死亡したのは誤診が原因として、両親が約9千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、長崎地裁は11日、誤診を認め、運営する県病院企業団に計約6455万円の支払いを命じた。
担当医は腸炎と診断したが、実際は急性心筋炎だった。井田宏裁判長は「重度の心筋炎を疑い、治療が可能な医療機関へ転送していれば救命できた。転送義務に違反した」と判断。過失はないとする病院側の主張を退けた。
判決によると中学生は10年9月、頭痛や吐き気で救急外来を受診。病院は処置をしたが症状は改善せず、3日後に死亡。(共同)」
小児の心筋炎のなかに,症状が非典型的でありながら,急激に進行し重大な結果を生じる例があることは知られています.診断はたしかに難しいことが多いのですが,裁判では,その事案でいつどの程度疑いをもつことが可能だったか,がポイントとなります.患者側弁護士にとって,心筋炎による死亡事案を提訴するか否かは具体的な事案の事実認定・医学評価により微妙なところがありますので,大変悩ましい問題です.本判決は,その意味で参考になるものと思われます.判例集に掲載されたらよく読みたいと思います.
【追記】
産経新聞「医療ミス賠償を大幅減額 長崎」(2015年2月27日)は,つぎのとおり報じました.
「長崎県新上五島町の上五島病院で平成22年、入院中の女子中学生=当時(13)=が死亡したのは誤診が原因として、両親が約9千万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁(一志泰滋裁判長)は26日、運営する長崎県病院企業団に計約6400万円の支払いを命じた1審判決を変更し、330万円の支払いを命じた。」
福岡高裁は,因果関係の認定を変更したのでしょう.判例集に掲載されたらよく読みたいと思います.
弁護士 谷直樹
ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
↓
にほんブログ村