弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

都市公園における受動喫煙対策

私の事務所の近くに外濠公園があります.ここは,遊具もあるのですが,喫煙者のための公園となっているため,子どもは事実上利用できない状態です.

公園は不特定多数の人が利用する場所(公共の場)です.公園での喫煙を許すことは,タバコ煙を不快に思う人の公園利用を妨げますので,公園は基本的に禁煙とすべきと思います.
平成22年2月25日厚生労働省健康局長通知(健発0225第2号)は,「受動喫煙による健康への悪影響については、科学的に明らかとなっている。」「多数の者が利用する公共的な空間については、原則として全面禁煙であるべきである。」「特に、屋外であっても子どもの利用が想定される公共的な空間では、受動喫煙防止のための配慮が必要である。」としています.
和歌山県の岩出市都市公園条例(平成23年3月29日 条例第3号(平成26年4月1日施行)第5条は,「都市公園においては、次の各号に掲げる行為をしてはならない。(中略)(11) 喫煙をすること。」と定めています.
たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(WHO FCTC)第8条とたばこの煙に晒されること(受動喫煙)からの保護に関するガイドラインは,公共の場での受動喫煙防止対策促進を求めています.
公共の場とは,不特定多数のものが利用,出入りする事が可能な空間であり,屋外であっても道路,公園なども含まれる,と考えるべきでしょう.公共の場で受動喫煙被害を受ける可能性があるところについては全面禁煙とすべきでしょう.

全面禁煙にすると守らない者によりかえって迷惑が生じるとの考えからか,喫煙所を設ける公園があります.
しかし,都市公園法第2条第2項は, 「この法律において「公園施設」とは、都市公園の効用を全うするため当該都市公園に設けられる次の各号に掲げる施設をいう。」とし,
「三  休憩所、ベンチその他の休養施設で政令で定めるもの」
「七  売店、駐車場、便所その他の便益施設で政令で定めるもの」
「九  前各号に掲げるもののほか、都市公園の効用を全うする施設で政令で定めるもの」
と定めています.
都市公園法施行令は細かく休養施設(休憩所、ベンチ、野外卓、ピクニック場、キャンプ場その他これらに類するもの),便益施設(売店、飲食店(料理店、カフェー、バー、キャバレーその他これらに類するものを除く。)、宿泊施設、駐車場、園内移動用施設及び便所並びに荷物預り所、時計台、水飲場、手洗場その他これらに類するもの)を列挙していますが,喫煙所はあげていません.喫煙所は,これらに類するものとも言えません.
したがって,本来,都市公園に喫煙所を設けることはできないのではないでしょうか.

NHK「たばこの禁煙・分煙 進んだけれど」(2014年6月27日)は, 次のとおり報じました.

「道路を歩いている時に、「たばこの煙がけむいな」と感じた経験がある人も多いのではないでしょうか?こうした道路などの公共のスペースに流れ出るたばこの煙を規制しようという動きが東京の都心で出てきています。
背景には公共のスペースなどで禁煙や分煙が進んだことで、問題が引き起こされている現状があります。
首都圏放送センターの笹谷岳史記者が解説します。


喫煙者だらけの公園

東京・千代田区にある外濠公園。
ブランコなどの遊具が設置されていますが、遊ぶ子どもたちの姿はほとんどありません。

代わりに集まっているのは、たばこを吸う大人たちです。
こうした状況になった背景には、公共のスペースなどで禁煙や分煙が進んだことがあります。
千代田区では路上での喫煙を禁止する条例を12年前に作り、路上で喫煙する人はほとんどいなくなりました。
しかし、その一方で、喫煙が禁止されていない公園に喫煙者が大勢集まるようになり、子どもたちが寄りつかなくなってしまったのです。

公園の近くに住む2人の幼いこどもを育てる母親は「この公園はたばこのにおいで臭くて嫌です。子どもを遊ばせることはできません」と話していました。


たばこで閉鎖した公園も

なかには、たばこの影響で閉鎖した公園もあります。
千代田区のオフィス街にある公園、「錦三会児童遊園」。
フェンスで囲われ、誰も入ることができなくなっています。
近くの会社などで働く人たちがたばこを吸いに集まったため、大量の吸い殻が捨てられ、去年の9月から閉鎖されています。

地元の町会長は「吸い殻でとても汚く、印象が悪くなってしまったのが嫌で、一時的に閉鎖しました。近く再開したいと思っていますが、また、同じようなことが起きれば、公園をなくすかもしれません」と話していました。
こうした状況を受けて、千代田区は公園ごとに禁煙にするか、分煙にするかなど、ルールを定めることにしています。


踏み込んだ対応の自治体も

さらに、踏み込んだ対応をしようとしている自治体もあります。
千代田区の隣にある港区は、多くの企業が立地するほか、新橋や六本木など全国有数の繁華街を抱えています。
港区に寄せられる苦情で特に多いのが、喫煙所から流れ出るたばこの煙です。
港区は、路上のほか、公園での喫煙を禁止しているため、特定の喫煙所に多くの人が集まってしまい、煙が付近の公共のスペースにまで広がってしまっているのです。

このため、港区は企業や店の敷地内であってもこうした喫煙所を規制できるように条例を改正、来月1日に施行されます。
港区によりますと、こうした条例は全国で初めてだということです。


改正された条例の内容は

改正された条例では、道路や公園だけでなく、歩行者が自由に行き来できるビルの敷地なども「公共の場所」と位置づけています。
そのうえで、こうした場所を通る人たちが煙を吸うおそれがある場合には、ビルや商店などの事業者に敷地内であっても灰皿の撤去や移設を求め、指導や勧告を行っても従わない場合は、事業者名を公表するとしています。
条例を改正したことについて、港区環境課の奥野佳宏課長は「たばこの煙で迷惑する人たちがいなくなるようにという思いで条例を改正しました」と話していました。
条例の改正にあわせて、港区の担当者は道路沿いに灰皿を設置している企業や店を訪ねて説明するなど理解を求めています。

港区から説明を受けたたばこ屋を経営する男性は、「店先に灰皿を置くことで、昼休みなどの時にたばこを吸おうと、買いに来てくれる人がいますが条例なのでしかたがありません」と話していました。


規制だけでなく喫煙所確保

港区の対策は、規制だけではありません。
屋内の喫煙所を増やすための制度も始めています。
昨年度から企業や店などが一般の人も利用できる屋内の喫煙所を設置した場合、最大で500万円を補助しています。

この制度を利用して設置されたビルの1階にある屋内喫煙所を利用していた男性は、「ルール守って吸う人、吸わない人がそれぞれ迷惑かけないように、こういう場所を作るのはよいと思います」と話していました。


設置が進まない屋内喫煙所

しかし、この制度を使って設置された屋内の喫煙所は、港区内ではまだ1か所だけです。
都心の1等地に喫煙のためだけのスペースを確保することが難しいため、こうした喫煙所はなかなか増えないのが現状です。
また、条例の改正で道路などに面したところに設置されていた灰皿が減る可能性があるため、たばこのポイ捨てが増えるのではないかと心配する声も聞かれます。
たばこを吸う人と吸わない人のそれぞれの権利を守りながら、みんなが気持ちよく過ごせる環境を実現するためには、まだまだ課題は残されていると感じました。」


谷直樹

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by medical-law | 2014-06-30 09:10 | タバコ