弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

ZMapp投与の倫理的問題

AFP 「エボラ実験薬の投与、倫理めぐる議論に」(2014年8月7日)は,次のとおり報じました.

「エボラ出血熱の流行ですでに1000人近くのアフリカ人が死亡している中、エボラ出血熱を発症した米国人患者2人に実験薬を投与した決定をめぐり、倫理をめぐる議論が起きている──だが米国の専門家らはこの決定を倫理的に正当化しうると述べる。

 米キリスト教系支援団体「サマリタンズ・パース(Samaritan's Purse、サマリア人の財布)」の米国人医療従事者2人に実験薬「ZMapp」が投与されたことを受け、世界保健機関(World Health Organization、WHO)は6日、西アフリカにおけるエボラウイルスの感染拡大に対して実験薬を投与するべきかどうかを話し合う特別会合を来週開くと発表した。

■エボラ研究第一人者「アフリカにも実験薬利用の機会を」

 同実験薬は現在、開発のごく初期段階にあり、これまではサルでしか臨床試験が行われていない。また大量生産も行われておらず、エボラを治療する能力があるかどうかも証明されていない。だが実験薬を米国人患者に投与したとのニュースに対し、ギニアやリベリア、シエラレオネなどの感染者の多い地域に同実験薬を提供するべきとの声が上がっている。

 7人の感染が確認されているナイジェリアは、「ZMapp」入手の可能性をめぐり米疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention、CDC)と協議を始めたと発表している。

 また、1976年にエボラウイルスを発見した一人であるロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院(London School of Hygiene and Tropical Medicine、LSHTM)学長のピーター・ピオット(Peter Piot)氏を含む、エボラ研究の第一人者3人は6日、同実験薬を幅広く提供するべきだと声明を発表した。

 米紙ロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles Times)によると3人は声明で「もしエボラがいま欧米諸国で広がっているとしたら、各国の公衆衛生当局はリスクにさらされている患者たちに実験薬や実験ワクチンを提供するだろう。エボラの流行が起きているアフリカ諸国にも同じ機会が与えられるべきだ」と主張した。

■実験薬の危険性、誰が判断?

 だが、臨床試験はリスクが高い。リスクの高い臨床試験の候補に米国人2人がなった理由について、米ジョージタウン大学(Georgetown University)の生命倫理センターのG・ケビン・ドノバン(G. Kevin Donovan)氏は、2人が医療的な訓練を受けており実験薬の危険性を理解できることだったと述べた。

 ニューヨーク大学(New York University)の医療倫理部門責任者のアーサー・キャプラン(Arthur Kaplan)氏は、実験薬がこれまでのところ良い反応を示しているものの、有効と言うには「ほど遠い」状況だと話し、「今後の倫理的な対策は、流行を阻止する予防対策を倍増することだ」と提唱した。バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領も6日、実験薬よりも実証済みの保健対策に力を注ぐべきだと呼び掛けている。

 WHOの倫理委員会に携わった経歴のある米ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)のナンシー・カシュ(Nancy Kass)教授は実験薬の危険性を指摘した上で、実験薬を広く提供するかどうかの判断は「世界最高の専門家たちが下すべき」と述べ、来週のWHO会合に期待を寄せた。(c)AFP/Naomi Seck」


ZMappはマップ・バイオファーマシューティカル社がタバコとネズミから抽出したエボラ抗体を混合して作った実験薬です.ZMappの大量生産は困難です.
有効性と安全性が検証されない実験薬の提供は倫理的に疑問と思います.
ZMapp投与の前にできることはあるはずです.


谷直樹

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by medical-law | 2014-08-08 08:21 | 医療