東京地裁平成26年9月10日判決,大学病院造影検査怠り下大静脈フィルター抜去で賠償命令
「○○医大病院(東京都新宿区)で2011年、大腸がんで入院して死亡した男性(当時64歳)の遺族が、大学側に約3000万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は10日、大学側に約400万円の賠償を命じる判決を言い渡した。
近藤昌昭裁判長は「肺塞栓症の防止に必要な検査を怠った」と述べた。
判決によると、男性は、腹部の静脈にできた腫瘍の塊が肺に移動して肺塞栓症を起こすのを防ぐため、静脈に器具を挿入する措置を受けた。器具の除去直後に肺塞栓症になり、約2か月後に死亡した。
大学側は「器具は適切に取り除き、死亡との因果関係もない」と主張。判決は死亡との因果関係は否定する一方で、医師は除去の際に必要な検査を怠ったと指摘し、「除去が肺塞栓症を引き起こした可能性も相当程度ある」と認定した。」
本件は,私が担当した事件です.
大学病院で下大静脈フィルターを抜去したところ,その数分後に肺塞栓症に陥り,多臓器不全により死亡した患者の遺族が,損害賠償を求めた事案です。
下大静脈フィルター回収キットの添付文書には,「下大静脈フィルターの回収前には,血管造影等を行い,捕獲した血栓の評価を行うこと」などと記載されています.
ところが,大学病院の医師は,血管造影検査等を行わずに,下大静脈フィルターを抜去しました.本判決は,その点について医師の注意義務違反を認めています.
フィルターに捕獲されていた腫瘍の塊がフィルター抜去により肺動脈にとび,肺塞栓症を発症したとみるのが理にかなっていると思いますが,本判決は,フィルター抜去後数分の間に新たに腫瘍の塊(塞栓子)がとんだ可能性もあるとして,死亡との因果関係について高度の蓋然性を認めず,相当程度の可能性が認められるとしました.
本判決が注意義務違反を認めた点は正しく,因果関係について相当程度の可能性にとどまるとして高度の蓋然性を認めなかった点は不相当ではないかと考えます.
谷直樹
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