弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

クオモNY州知事とクリスティーNJ州知事が強制隔離の方針発表

CNN「「米NY・NJ州の「強制隔離」方針、一部に批判の声も」(2014年10月26日)は,次のとおり報じました.

「ニューヨーク、ニュージャージー両州がエボラ出血熱の流行地域から帰国する医療従事者に最大21日間の強制隔離を義務付けたことに対し、連邦当局や医療支援団体から批判的な声が上がっている。

クオモ・ニューヨーク州知事とクリスティー・ニュージャージ州知事は24日に突然、強制隔離策を発表、施行した。対象となるのは両州の空港から入国する乗客のうち、西アフリカのエボラ熱流行地域で患者と直接接触した人。接触はなくても流行地域への渡航歴がある人は積極的な観察対象とし、必要に応じて隔離する。

ニューヨーク州では23日、流行国ギニアでのエボラ熱治療活動から帰国した医師の感染が確認されたばかりだった。

米連邦当局者が匿名で語ったところによると、米疾病対策センター(CDC)は両知事の発表に驚き、流行国へ向かおうとする医師や看護師らがいなくなる事態を心配しているという。

ニューヨーク市当局者も匿名で、「市に事前の相談はなかった。衝撃的だ」と述べた。

国際医療支援団体、国境なき医師団(MSF)は声明で、両州が発表した指針には不明点が多いため、詳細の確認を急いでいると述べた。そのうえで、「西アフリカに手を差し伸べようとするボランティアの意欲をそぐ結果になることだけは避けたい」との立場を示した。」


アンドリュー・クオモ・ニューヨーク州知事は,父親もニューヨーク州知事で,民主党員です.クリス・クリスティー・ニュージャージ州知事は,ソコリッチ・フォートリー市長の選挙戦における対応への報復としてジョージ・ワシントン橋を4日間閉鎖した疑惑があり,共和党員です.
この民主党のクオモ・ニューヨーク州知事と共和党のクリスティー・ニュージャージ州知事が協調して,エボラ熱流行地域から帰国する医療従事者等に対する最大21日間の強制隔離を方針を発表したのです.
しかし,感染症に対する水際作戦には限界があります.ケネディ,ニューアーク両空港以外に,ワシントン,シカゴ,アトランタの各空港ルートから入国する人もいますから,完全に防止することはできません.最大21日の強制隔離は,実質的に出入国に対する制限として過大ではないでしょうか.
エボラ熱に対する効果的な対策は,流行地域の流行を国際的支援によって沈静化することです.元から絶つのが有効な対策です.欧州連合(EU)はエボラ熱の感染拡大を食い止めるため10億ユーロの拠出を決めた,と報じられています.
今回のエボラ熱流行は,世界保健機関(WHO)によると,無能な職員や官僚的な組織体質から初動に失敗し感染拡大を食い止められなかった,アフリカ地域事務局長とWHOのチャン事務局長との意思疎通もなかった,とのことです.エボラ熱が空気感染型に変異したという説は否定されています.対応を誤ったことによる人為的な流行と言えるのではないでしょうか.そうであれば,適切な対応(国際的支援)で流行を沈静化することは可能なはずです.

CNN「エボラ熱流行 感染者1万人を超える、4922人死亡」(2014年10月26日)は,次のとおり報じました.

「西アフリカ諸国で大流行しているエボラ出血熱の問題で世界保健機関(WHO)は25日、疑い例を含む感染者数が1万141人と1万人の大台を超えたことが確認されたと報告した。

死者数は計4922人。感染者はほぼ全員がリベリア、シエラレオネとギニアで出ている。WHOによると、シエラレオネでは全ての地区で、リベリアでは1地区を除いた全地区で少なくとも1件の感染例が報告された。

エボラ熱に感染した医療従事者数は世界規模で計450人。ほぼ全員が西アフリカ諸国で発生した。このうちの死亡者は244人となっている。

一方、モーリタニア政府は24日、隣国マリでエボラ熱の初の死者が出たことを受け、感染拡大の予防措置として東部の国境線を閉鎖したと発表した。モーリタニアの国営通信によると、同国は既にエボラ熱の被害が判明した諸国からの旅行客の入国を禁止している。

また、アフリカ東部のエチオピア政府はエボラ熱対策で西アフリカ諸国に医療従事者200人を派遣する計画を発表した。アフリカ連合(AU)が1週間前に出した医療関係者派遣の緊急要請に応じた。」


攻撃は最大の防御なり"Attack is the best form of defense",と言います.流行地域への人的・物的援助こそ,最も有効なエボラ熱対策だと思います.

その後ニューヨーク州は2強制隔離を自宅からの外出禁止措置に緩和すると発表しました.た。

Dallas Hospital Had the Ebola Screening Machine That the Military Is Using in Africa

The military is using an Ebola screening machine that could have diagnosed the Ebola cases in Texas far faster, but government guidelines prevent hospitals from using it to actually screen for Ebola.
It’s a toaster-sized box called FilmArray, produced by a company called BioFire, a subsidiary of bioMérieux and it’s capable of detecting Ebola with a high degree of confidence — in under an hour.


さすが米軍です.

Emergency authorization: FDA approves two new Ebola-detection kits

The US medical watchdog has issued an emergency authorization for the use of two new diagnostic toolkits by BioFire Defense designed to detect Ebola virus in people showing signs of infection or those who could have been exposed to the virus.

これで民間でも迅速に検査ができまるようになるでしょう.

【追記】

ロイター「エボラ関連の医療従事者隔離で新指針、米CDCが発表」(2014年 10月 28日)は,次のとおり報じました.T

「米疾病対策センター(CDC)は27日、エボラ出血熱が流行している西アフリカから帰国した医療関係者に対して一部の州で強制隔離が行われて物議を醸していることを受け、新たな指針を発表した。

CDCのフリーデン所長は、最も感染リスクの高い人については自主的な自宅待機を求めるとする一方、流行国であるリベリア、ギニア、シエラレオネから帰国した医療従事者については、隔離せずに毎日体調を監視することが求められるとの見解を示した。

新指針では感染リスクを4段階に分類。流行地域から帰国した医療従事者の大半は「一定のリスク」、米国の施設で患者の治療にあたった医療従事者は「低いがゼロではないリスク」に区分される。

隔離については、西アフリカで感染防止活動にあたった軍要員を、感染の兆候が見られなくても隔離すると軍が表明したほか、シエラレオネで患者の治療にあたった看護師がニュージャージー州で強制隔離され、陰性の判定を受けた後も2日間隔離を継続された。

こうした事態に、公衆衛生の専門家や国連、医療慈善団体、ホワイトハウスなどから、強制隔離は科学的に正当化されるものではなく、西アフリカでの活動の妨げになるとの批判が高まっていた。」


谷直樹

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by medical-law | 2014-10-27 00:22 | 医療