弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

負傷した羽生結弦選手の出場について

羽生結弦選手は、頭部、顎に負傷しながら、競技に出場しました.
これは、非常に危険な行為で、主催者あるいは日本連盟が止めるべきでした.
頭部に外傷を負うと、脳出血を起こしたり、解離性の脳梗塞を起こすことがあります.再び頭部を打つとセカンドインパクトシンドロームで死亡することもあります.
羽生結弦選手は、危険な状態で、実際5回も転倒しました.

頭部外傷の危険は、よく知られています.頭部に外傷を負った選手の出場を許すことは主催者としての注意義務に反する可能性があります。そもそも、多くの選手に同時に練習を行わせることも安全性を確保していなかったと評価されるのではないでしょうか.
ラグビーでは、脳震盪を起こした選手は、3週間出場できません.
ボクシングでは、レフリーストップがあります.
これを機会に、すべてのスポーツで、スポーツ選手の安全を守るために頭部外傷や脳震盪を起こした選手は3週間競技に出場できないという規則を作成することを検討してほしいと思います.

一般社団法人日本脳神経外科学会と一般社団法人日本脳神経外傷学会の「スポーツによる脳損傷を予防するための提言」 (平成25年12月16日)は、以下のとおりです.

「日本脳神経外科学会ならびに日本脳神経外傷学会は、「スポーツによる脳損傷」を予防するための研究を行い、それにもとづいて可能な限り最善の診療を行うよう努力してきた。
しかし、医師は、患者ならびに関係者の行動を規制することができない。したがって、的確な診療を行うには、国民の理解が不可欠である。この提言は、「スポーツによる脳損傷」について、国民が認識しておくべき必須の事項を整理したものである。
1-a. スポーツによる脳振盪は、意識障害や健忘がなく、頭痛や気分不良などだけのこともある。
1-b. スポーツによる脳振盪の症状は、短時間で消失することが多いが、数週間以上継続することもある。
2-a. スポーツによる脳振盪は、そのまま競技・練習を続けると、これを何度も繰り返し、急激な脳腫脹や急性硬膜下血腫など、致命的な脳損傷を起こすことがある。
2-b. そのため、スポーツによる脳振盪を起こしたら、原則として、ただちに競技・練習への参加を停止する。競技・練習への復帰は、脳振盪の症状が完全に消失してから徐々に行なう。
3. 脳損傷や硬膜下血腫を生じたときには、原則として、競技・練習に復帰するべきではない。」

谷直樹

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by medical-law | 2014-11-11 01:28 | コンプライアンス