弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

東京都と北区が医療法人岩江クリニックに不適切な拘束を改善するよう勧告

東京都福祉保健局は、平成27年2月17日、医療法人岩江クリニックに対し、介護保険法第76条の2第1項第3号及び第83条の2第1項第2号の規定に基づき、当該事業者が運営する指定居宅介護支援事業所及び指定訪問介護事業所に対して、身体拘束について改善勧告を行ったとのことです.
勧告内容は以下のとおりです.

「(1) 西ケ丘居宅介護支援事業所(居宅介護支援)

 (勧告要件:法第83条の2第1項第2号)
 当該事業所においては、利用者に身体拘束(※)を行う際に「身体拘束ゼロへの手引き」に定められた「切迫性」「非代替性」「一時性」の3つの要件を満たしているか慎重に検討することなく、主治医からの指示であるという理由により、介護支援専門員が身体拘束を前提とした居宅サービス計画を作成している事実が東京都の監査において認められた。
<東京都指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営の基準に関する条例(平成26年3月31日条例第52号)第3条第1項、第20条第4項>

(2) 西ケ丘訪問介護事業所(訪問介護)

 (勧告要件:法第76条の2第1項第3号)
 当該事業所においては、利用者に身体拘束を行う際に「身体拘束ゼロへの手引き」に定められた「切迫性」「非代替性」「一時性」の3つの要件について慎重に検討することなく、主治医からの指示であるという理由により、訪問介護員が身体拘束を前提としたサービスの提供を行っていた事実が東京都の監査において認められた。
<東京都指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営の基準に関する条例(平成24年10月11日条例第111号)第4条、第27条第1項第1号及び第3号>

※身体拘束は緊急やむを得ない場合以外は決して許されず、また緊急やむを得ない場合であっても「身体拘束ゼロへの手引き」に定められた「切迫性」「非代替性」「一時性」の3つの要件を満たし、かつ、それらの要件の確認等の手続きが極めて慎重に実施されているケースに限定して認められるものである。」


北区のシニアマンション3棟の入居者約130人を拘束していたあの事案です.
医療法人と連携する不動産業者が家賃を受け取り、医療法人の事業所が介護サービス料を受け取り、医療法人が医療費を受け取り、親族の会社が食事と家事の対価を受けとる、というように分業化されていた関係で、有料老人ホームに該当しないので指導ができないという解釈もあって、指導が遅れましたが、ついに上記のとおり改善勧告が行われました.法の網をかいくぐることはできなかったわけです.


  谷直樹

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by medical-law | 2015-02-19 02:38 | 福祉