弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

兵庫県立加古川医療センター脳神経外科,開頭の際に細い刃を使い折れた先端部を残しため再手術(報道)

NHK「手術使用のドリル 刃の先端が頭の中に残る」(2015年2月20日)は,次のとおり報じました.

「去年、兵庫県加古川市の県立加古川医療センターで、女性患者が頭の手術を受けた際に手術に使われていたドリルが折れ、刃の先端が頭の中に残ったままになっていたことが分かり、病院はミスを認めて謝罪しました。

兵庫県病院局によりますと、去年9月、県立加古川医療センターの脳神経外科で、神戸市に住む60代の女性がくも膜下出血の手術を受けた際に、頭蓋骨を切るためにドリルが使われましたが、その際、ドリルの刃の先端が折れて頭の中に残ったままになっていたということです。
2か月後に検査を行った際に直径1.1ミリ、長さが5ミリほどの刃の先端が後頭部に残っていることが分かり、病院は女性に謝罪したうえで再手術を行って取り除いたということです。
今のところ女性の容体に異変はないということです。
県病院局によりますと、こうした手術では通常太い刃を使いますが、今回は医師らが事前の確認を怠り、細い刃を使用した結果、刃が折れたとみられ、手術後に刃の破損の有無も確認していなかったということです。
県病院局は「このような事案が発生し大変申し訳ない。ドリルを使った際には刃が破損していないかを必ずチェックするなどの再発防止策を徹底する」と話しています。」


開頭は,脳神経外科手術の基本的手技です.開頭は,専用のドリルで小さな穴をいくつか開け,これをつなぐ形で電気鋸のような器具で穴をつないで頭蓋骨を切りとり,骨窓をつくります.報道からすると,この開頭の際に,ドリルの種類を間違え,確認を怠ったために起きた事故のようです.
再手術を行い,刃の先端部を取り除き身体に影響を残さなかったことは,よかったと思います.
また,謝罪したのも正しい対応と思います.

なお,私は,今,関東の裁判所で,脳神経外科の或る医師が,開窓部を広げるために開窓部の傍にドリルで新規の穴をあけようとして,回転しているドリルを脳実質内に滑り落とし脳を損傷した事案の裁判を担当しています.ドリルを脳実質内に滑り落とさない注意義務は,結果を生じさせないという注意義務になってしまいますので,裁判は,具体的にどのような注意をはらえばドリルを脳実質内に滑り落とさないですむのか,が問題になります.その病院は,ドリルが滑り落ちることはどのように注意しても回避できない,と主張しています.そこで,裁判は,開窓部を広げる場合に,ヤスリの様なドリル(ダイヤモンド・ドリル)などで骨縁を削り取り窓を大きくすべき注意義務(開窓部の傍にドリルを用いて新規の穴をあけようとしない注意義務)があるか否かが争われています.その病院は,そのような注意義務があることを否定し,謝罪もしません.
そのような対応に比べると,加古川医療センターの対応は立派にみえます.

  谷直樹

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by medical-law | 2015-02-22 05:31 | 医療事故・医療裁判