弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

医療事故調査制度 医師らが適切運用要望

NHK「医療事故調査制度 医師らが適切運用要望」(2015年2月24日)は、次のとおり報じました.

「24日は東京と福島の医師など6人が厚生労働省を訪れ、橋本岳政務官に制度が適切に運用されるよう要望書を手渡しました。
この中で、現在行われている制度の運用方針を議論する厚生労働省の検討会で、遺族などの委員が、難しい医療の専門用語を理解するためにも調査結果は文書で受け取ることを求めているのに対し、文書を渡せば裁判や捜査に利用され医師の責任が追及されるおそれがあるとして口頭での説明にとどめるよう求めています。
また、調査報告書に再発防止策を書き込むことも責任追及につながるとして反対しています。
14年前に起きた医療事故で刑事責任を問われ無罪が確定した佐藤一樹医師は「今回の制度は医療安全の向上を目的としたもので、医師の責任が問われれば現場が萎縮し医療は崩壊する」と話しています。」


今度は、逆に、東京と福島の医師など6人からの要望です.

調査結果を文書を渡せば裁判や捜査に利用され医師の責任が追及されるおそれある、医師の責任が追及されれば現場は萎縮し、医療は崩壊する、という主張はよくききます.
しかし、これは本当でしょうか.

責任があると考えられる事案は、文書があってもなくても、責任追及されるのではないでしょうか.
責任があると考えられる事案で責任追及されるのは、悪いことなのでしょうか.
責任がある人が責任を負わない社会は良い社会なのでしょうか.
責任ある人が責任を負うことで、医療現場は萎縮するのでしょうか.

起訴されて無罪なる人は、数は少ないのですが、たしかにいます.
しかし、だからと言って、すべて起訴すべきではない、という考える人は、少数でしょう.

責任追及につながる可能性がすこしでもあるからという理由で、調査の透明性を損なう制度設計を行うことのほうが、医療にとってマイナスの結果を生じるではないでしょうか.
責任追及につながるとして調査報告書に再発防止策を書き込むことも反対とのことですが、それでは調査の意義は大幅に失われるのではないでしょうか.

むしろ、隠されたほうが不信感を生じ、紛争化しやすいように思います.
オープンにすることが信頼につながるでしょうし、オープンにした結果、責任を負うべきものは責任を負い、責任を負わないものは責任を負わない、という当然の結果につながるとすれば、それは悪いことなのでしょうか.


  谷直樹

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by medical-law | 2015-02-25 03:31 | 医療事故・医療裁判