受刑者の精密検査希望を認めず検査を怠った刑務所医師の過失を認め,国が熊本地裁で800万円和解(報道)
「肝がんで死亡した熊本刑務所の元受刑者の男性=当時(68)=が、刑務所の医師にがんの兆候を見落とされたため病状が悪化したとして、国に2200万円の損害賠償を求めた訴訟は4日、国が遺族2人に計800万円を支払う内容で、熊本地裁(中村心裁判長)で和解した。
訴状によると、男性はC型肝炎にかかったことがあり、服役中の2011年6月、血液検査で肝機能の数値が異常値を示し、同年11月の腹部超音波検査では白い影が見つかった。12年6月の血液検査で数値が悪化したため、男性は精密検査を希望したが、刑務所の医師は認めなかった。
同年8月、男性は激しい腹痛を訴え、搬送された外部の病院で肝腫瘍破裂と診断され、緊急手術を受けた。男性側の弁護士によると、男性は提訴後の13年、肝がんで死亡した。地裁は昨年12月、和解案を示し「検査をしなかった点で刑務所側に過失があった」と指摘した。」
2012年6月の時点の医師の過失は明らかと思いますが,因果関係の認定が問題となります.2012年6月に精密検査を行っても,同様に肝がんで死亡したことも十分考えられるからです.
仮に,2011年6月の過失,同年11月の過失を認めれば,その時点に精密検査を行っても同様に肝がんで死亡した可能性は低くなります.
裁判所は,2013年に肝がんで死亡しなかった相当程度の可能性があると判断し800万円という和解金額を提示したのでしょう.一般に,高度の蓋然性が認められず,相当程度の可能性しかないとされる事案でも,事案に応じて金額には開きがあります.800万円という金額は,相当程度の可能性でも比較的上のほうを認めたものと考えられます.
谷直樹
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