弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

最高裁裁判官人事,金築誠志最高裁判事退官へ

平成27年3月31日付で定年退官する金築誠志最高裁判事の後任は,東京高裁長官の小池裕判事と閣議決定されたことが報じられています
2月に就任した大谷直人最高裁判事(修習29期)は,前職が大阪高裁長官でしたので,次は東京高裁長官の小池裕判事(修習29期)とみられていましたので,予想通りの人事です.小池裕判事については別の機会に書くことにし,今回は金築誠志最高裁判事について書きます.

金築誠志最高裁判事は,補足意見を頻繁に書かれていた印象があります.
パブリシティ権侵害に該当する場合を限定的に解した最高裁第一小法廷平成24年2月2日判決(ピンク・レディ事件)の補足意見等.

DNA型鑑定と親子関係不存在確認の訴えについて判断した3つの最高裁第一小法廷平成26年7月17日判決における反対意見も有名です.

民法722条が,生物学的父子関係(DNA型鑑定)より,身分関係の法的安定性を重視した立法であることから親子関係不存在確認の訴えを認めない多数意見に対し,金築誠志裁判官は,次の反対意見を書きました.長文なのでごく一部を抜粋します.

「もし親子関係不存在確認の訴えが認められないとすれば,Bとの法律上の親子関係を解消することはできず,Cとの間で法律上の実親子関係を成立させることができない。血縁関係のある父が分かっており,その父と生活しているのに,法律上の父はBであるという状態が継続するのである。果たして,これは自然な状態であろうか,安定した関係といえるであろうか。確かに親子は血縁だけの結び付きではないが,本件のように,血縁関係にあり同居している父とそうでない父とが現れている場面においては,通常,前者の父子関係の方が,より安定的,永続的といってよいであろう。」
「さらに,Bとの法律上の父子関係が解消されない限り,Cに認知を求めるという方法で,子が自らのイニシアチヴによりCとの法律上の父子関係を構築することはできないのであって,Bに対する親子関係不存在確認の訴えを認めないことは,子から,そうした父を求める権利を奪っているという面があることを軽視すべきでないと思う。」
「私は,科学的証拠により生物学上の父子関係が否定された場合は,それだけで親子関係不存在確認の訴えを認めてよいとするものではなく,本件のように,夫婦関係が破綻して子の出生の秘密が露わになっており,かつ,生物学上の父との間で法律上の親子関係を確保できる状況にあるという要件を満たす場合に,これを認めようとするものである。」
「身分法においては,何よりも法的安定性を重んずるべきであり,法の規定からの乖離はできるだけ避けるべきだという意見があることは十分理解できるが,事案の解決の具体的妥当性は裁判の生命であって,本件のようなケースについて,一般的,抽象的な法的安定性の維持を優先させることがよいとは思われない。」


「事案の解決の具体的妥当性は裁判の生命」と言い切るところは,裁判官の鑑と思います.

  谷直樹

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by medical-law | 2015-03-06 00:39 | 司法