武雄市,腹腔鏡での胆のう摘出手術における胆管の一部損傷で示談(報道)
「武雄市の旧市民病院で、市内在住の女性が腹腔鏡で胆のう摘出手術を受け、内臓の一部を損傷させていたことが分かった。女性は肝機能が低下し、完治しないまま死亡した。市は女性側と示談で損害賠償額1976万円で折り合い、13日、開会中の議会に賠償額を決める議案を提出した。
医療事故は、60歳代の女性が胆石症を発症し、2009年7月、腹腔鏡で胆のう摘出手術を受けた。その際に誤って胆管の一部を損傷させ、肝機能の低下を招いた。完治しないまま、入退院を繰り返していたが、14年3月に亡くなった。肝機能の低下だけが死亡原因ではないことは、市と女性側とで合意した。」
腹腔鏡で胆のう摘出手術を行う医師には,臓器を傷付けないよう愛護的な操作を行う注意義務があります.腹腔鏡での胆のう摘出手術における胆管の損傷は,不可避ではなく,愛護的な操作で回避できたはずです.なお,裁判では,愛護的な操作について具体的な特定を求められることがありますが,術中ビデオ等がないと特定は難しいことが多いように思います.そのような特定が難しい場合でも,胆管の一部を損傷させたことから,愛護的な操作に欠けるところがあった事実が一応推定されるのではないか,と思います.報道の事案は,おそらく医師の過失を認定できる事案でしょう.
胆管の一部を損傷したことで肝機能が低下した因果関係は,容易に認定できるでしょう.
完治しないまま死亡したとの報道ですので症状固定前の死亡となりますし,肝機能の低下が死亡に全く影響していないと判断するのは困難であるとすると,損害額の具体的な算定については争いが生じるところでしょうが,双方歩み寄りによる示談解決が適切な事案と思います.
谷直樹
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