和泉式部忌
あらさらむ このよのほかの おもひてに いまひとたひの あふこともかな(後拾遺和歌集)
百人一首にもとられている歌です.
冒頭の,在る=生きていることを「ざらむ」で否定推量してはじまります.「もがな」は実現を願う終助詞です.死が近いはずなのに,恋情が弱まることはありません.
よのなかに こひてふいろは なけれとも ふかくみにしむ ものにそありける(後拾遺和歌集)
恋という色はないのに深く身に染みる...浮かれ女と呼ばれた和泉式部らしい歌です.
をとこにわすられて侍りけるころ貴船にまゐりて御たらい川に蛍のとび侍りけるを見てよめる
ものおもへは さはのほたるを わかみより あくかれにける たまかとそみる(後拾遺和歌集)
貴船神社,川,蛍...きれいな情景です.蛍=魂というところは『細雪』にも影響を与えています.
くろかみの みたれもしらす うちふせは まつかきやりし ひとそこひしき(後拾遺和歌集)
後拾遺和歌集の選者は若い藤原通俊でした.和泉式部の激しい歌が数多く選ばれています.
ひとはゆき きりはまかきに たちとまり さもなかそらに なかめつるかな(風雅和歌集)
風雅和歌集は,後拾遺和歌集とは趣が違います.霧がま垣にとどまっている情景のなか中空を眺めている姿に余韻を感じます.
1000年以上前の歌で,結婚の形態は今とはちがいますが,よまれた心象風景は今と共通するものがあります.
谷直樹
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