日本肝移植研究会,神戸国際フロンティアメディカルセンターに生体肝移植の中止を求める方針
同センターの田中紘一院長は,生体肝移植の確立と普及に貢献した医師で,2005年3月まで京都大学大学院医学研究科移植免疫学講座教授・京都大学医学部附属病院病院長でした.
他の2名の専門医は,京都大学医学部2001年卒業,京都大学大学院医学研究2008年卒業の医師です.
報道によると,田中紘一院長は,死亡率の高さは他の病院で断られた患者も受け入れていたためで過失はない,と述べました.
しかし,他の病院が断ったにはそれなりの理由があるはずです.専門医がわずか3名しかいない同センターが他の病院が断った患者の手術を行った医学的根拠については述べられなかったようです.
NHK「生体肝移植手術の中止を求める方針」(2015年4月17日)は,次のとおり報じました.
「日本肝移植研究会が検討委員会を立ち上げ、病院と合同で調査を進めていました。
その結果、死亡した4人の中には、事前に肝臓の機能などを調べる検査を実施しておらず、手術をすべきかどうかの判断が適切に行われなかったとみられるケースがあったほか、手術後に起きた出血などの合併症の対応でも不十分な点があるなど、複数のケースで問題があったとしています。さらに、医師などのスタッフの数が少ないなかで手術が実施されていて、研究会は、今後、体制を作り直す必要があるとして、生体肝移植の手術の中止を病院側に求める方針を固めました。」
田中紘一院長は日本肝移植研究会の名誉会員で,日本肝移植研究会の会長は上本伸二京都大学医学研究科外科学講座(肝胆膵・移植外科分野)教授です.その日本肝移植研究会の調査結果が上記のとおり不適切,不十分な点を指摘する内容であったことは,重く受けとめられるべきでしょう.
第三者による調査・検証が必要・有用なことを示すものといえます.
同センターは,外国人患者への生体肝移植などを行う,医療産業都市構想の一翼を担う病院です.医療産業都市構想の背景には,医療産業の国際競争力を強化し,医療・医薬品・医療機器産業を自動車・家電産業に代わる次世代の産業に育成しようとする国策があります.
少数精鋭のスタッフで,難手術に挑戦したのは,この病院の性格,立ち位置によるものが大きかったのかもしれません.
問題イコール過失ではありませんが,手術適応,術後管理も含めて標準的な医療水準に充たない医療については,医師の「過失」が考えられます.その過失に因って患者が死亡したとすれば,医療過誤として医師・病院が民事上賠償責任を負うこともあります.
谷直樹
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