5年生存率低下による死の恐怖の慰謝料
「胸部X線検査で1センチ大の異常陰影が見落とされました。
1年後、他院にてステージⅡbの肺がんと診断され手術を受けました。
5年生存率の低下を理由に患者が損害賠償請求しました。
死への恐怖が高まったという理由が認められ病院側に約4500万円の
損害賠償請求が命じられました。
1センチの陰影を1年間放置しただけで、4500万円のペナルテイー。
これががんの診断遅れに関する医療訴訟の現実です。」
これは,東京地裁平成18年4月26日判決(「医療訴訟ケースファイルvol.3」140頁)のことを言っているのだと思いますが,東京地裁平成18年4月26日判決であれば,5年生存率低下による慰謝料等は4500万円ではなく,450万円です.
医療過誤事件の判決について,医療に素人の裁判官が下したトンデモ判決話が流布していますが,ほとんど都市伝説にちかいもので,実際の判決は決して患者側に甘いものではありません.患者側が専門的な「過失」「因果関係」「損害」について立証責任を負うのですから,医療訴訟の立証は大変です.
癌の見落としというミス(過誤)があっても,因果関係立証の壁に阻まれて低額の賠償に終わることもあり,そのようななかで,上記東京地裁判決は,発見治療が遅れ癌が進行してからの切除になったために被った不利益を法的にどのように評価したらよいかを考え,死への恐怖という立証可能な事実(損害)に着目して慰謝料400万円と弁護士費用50万円を認めた判決です,医師資格のある裁判官がよく考えぬいて書いた判決です.
なお,東京高裁で550万円の和解で確定しています.
1桁違うと,10倍違うことになりますので,朝日新聞掲載の,長尾和宏氏の「《1830》「がん治療に殺された」という人」では死亡慰謝料より高額の賠償を認めた判決となり,うける印象はだいぶ違います.
谷直樹
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