広島地裁平成27年5月12日判決,小児の低血糖見落とし事案で4968万円の賠償命令(報道)
「生後6か月の時に低血糖を見落とされ、治療が遅れて後遺障害が生じたとして、少女(13)と母親が中国中央病院(広島県福山市)を運営する公立学校共済組合(本部・東京)を相手取り、6700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が12日、広島地裁であった。
龍見昇裁判長は「医師が注意義務に違反した」として、組合に4968万円の支払いを命じた。
判決によると、少女は2002年2月、けいれんの疑いなどで病院を計4回受診。医師はてんかんの可能性を考え、脳波検査を実施した。3月末の血液検査で低血糖症と診断されて治療を受けたが、06年に重度の知的障害と認定された。
龍見裁判長は「けいれんの原因がてんかん以外による可能性を疑った上で、医師は血液検査を実施し、全身疾患の有無を識別する注意義務を負う」と認定。ただ、病院側の注意義務違反が障害のすべての原因とまではいえない、とした。」
本件は,私が担当した事件ではありませんが,小児科医にとっては,検査・診断の教訓となるものと思います.
小児のけいれんの原因としては,てんかん,熱性けいれんが最も多いのはたしかですが,小児科医は,てんかん,熱性けいれんと決めつけずに,鑑別診断を行うことが必要です.小児の低血糖症はまれな疾患ではなく,頻度は結構ありますので,きちんとした手順にしたがって問診,検査を行えば,容易に鑑別できたと思います.低血糖症は,脳が必要とする糖分が不足するため放置すると脳に障害が残ることがある疾患ですので,除外診断が必要だったはずです.
標準的な問診手順,検査手順を践むことが重要と思います.
谷直樹
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