神戸地裁平成27年5月19日判決,肺の影を認識しながら精密検査を勧めなかった病院に約4千万円の賠償命令
「兵庫県明石市藤江の明海病院で、医師が肺がんの可能性を指摘せず、手遅れになったとして、2012年に亡くなった男性=当時(68)=の遺族が、病院を運営する医療法人社団弘成会に約5千万円の損害賠償を求めた訴訟で、神戸地裁は19日、医師の過失を認定し、約4千万円の支払いを命じた。
判決によると、男性は05年12月、同病院での健康診断で肺に影が見つかり、11年4月まで経過観察を受けた。同年9月、他の病院で肺がんと診断され、12年6月に死亡した。
西井和徒裁判長は「医師は肺がんの可能性を認識していたのに男性に説明せず、精密検査も勧めなかった」と指摘。「がんの進行速度は遅かったと考えられ、手術で完全に取り切れば根治できた。いたずらに経過観察を行い、早期の治療を受ける機会を失った」とした。」
本件は,私が担当した事件ではありませんが,肺癌の進行速度が遅かったと認定し,過失と死亡との間の因果関係を認めた点が注目されます.
肺癌は,非小細胞癌はもちろん,小細胞癌でも初期であれば手術適応があり,抗癌剤治療の進歩もあり,過失がなければ治療を行って死亡結果を回避できた高度の蓋然性があったと認定できる事案も結構あります.
また,健康診断で肺に影が見つかったら,当然「要精密検査」でしょう.それなのに,明海病院の医師が患者に説明せず精密検査も勧めなかったのは,どうしてなのでしょうか.肺がんの可能性はあるがおそらく肺癌ではないだろうと思ったのでしょうか.
診断のための標準的な検査を実施しないでいると,このように医療過誤として責任を問われることがあります.
谷直樹
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