東北の2件の提訴報道に接して
毎日新聞「訴訟:中央病院で死亡、県に賠償求める 遺族が提訴 /岩手」(2015年5月20日)は次のとおり報じました.
「県立中央病院(盛岡市上田1)に入院していた盛岡市の女性(当時89歳)が亡くなったのは、病院側が適切な対応をしていなかったためとして、女性の遺族3人が県に慰謝料など計880万円の損害賠償を求める訴訟を、盛岡地裁に起こした。提訴は4月5日付。
訴状などによると、女性は心臓の筋肉が肥大して血管を圧迫する「肥大型心筋症」などを発症して、2013年4月に同病院に入院... 」
肥大型心筋症の89歳の女性患者の遺族が提訴した訴訟です.
報道で知る限りですが,請求金額等を考えると盛岡に医療ADRがあれば提訴前に解決できた可能性があった事案ではないか,と思いました.
河北新報「「拘束解除で呼吸器外れる」遺族が塩釜の病院提訴」(2015年5月12日)は次のとおり報じました.
「坂総合病院(塩釜市)に入院中だった宮城県利府町の男性=当時(75)=が遷延性意識障害(植物状態)になり死亡したのは、病院が男性の身体拘束を解いたために呼吸器を外してしまったからだとして、遺族3人が11日、病院を運営する宮城厚生協会(多賀城市)に2000万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こした。
訴えによると、男性は昨年2月上旬、靴擦れによって左足親指が壊死(えし)したため入院。治療中に感染症にかかって呼吸器が必要となったが、呼吸器が外れ、約4カ月間の植物状態を経てことし2月、心拍低下などで死亡した。
男性の両手には当初、拘束用ミトンが付けられていたが、病院が拘束を解除。男性が自分で呼吸器を外したとみられる。
遺族側は「病院は当時、『いつまでも拘束するのはかわいそうだった』と説明したが、生命維持に必要な呼吸器は厳格に管理すべきだ」と主張している。」
これも報道で知る限りですが,拘束を解除した時点で患者が自分で呼吸器を外してしまうことを標準的な医師が予見できたか否かがポイントとなると思います.
【追記】
河北新報「拘束解除と死亡無関係」病院側が反論」(2015年6月19日)は,次のとおり報じました.
「坂総合病院(塩釜市)に入院中だった宮城県利府町の男性=当時(75)=が死亡したのは、病院が男性の身体拘束を解いたために酸素チューブを外したことが原因だとして、遺族3人が病院を運営する宮城厚生協会(多賀城市)に約2010万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が18日、仙台地裁であった。協会は請求の棄却を求めた。
協会側は「身体拘束は必要な範囲で実施していた。男性は当時、自発呼吸をしており、酸素チューブが外れたことが命に関わる状態につながったとは言えない」と反論した。
訴えによると、男性は昨年2月上旬、左足親指の壊死(えし)のため入院。入院中、呼吸器が外れ、約4カ月間の遷延性意識障害(植物状態)を経てことし2月、心拍低下などで死亡した。
遺族側は「病院は男性の身体拘束を解くべきではなかった」と主張している。」
そもそもの機序,因果関係についても争いがあるのですね.病院は,死亡の原因を何と主張しているのでしょうか.
谷直樹
ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
↓

にほんブログ村 」