弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

新宿セントラルクリニックによるカットオフ詐欺裁判, 院長が「私の基準値は0.00」と証言(報道)

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東京スポーツ「性病詐欺”被害者2人目の裁判開始 被告の病院長が意外な反論」(2015年5月31日)は,次のとおり報じました.

「新宿セントラルクリニック」による“性病詐欺”で、2人目の“被害者”の損害賠償請求訴訟の口頭弁論が28日、東京地裁で行われた。

 性病でもない患者に対し、性病と偽った診断を下し、高額な医療費をせしめたとされる。男性A氏が200万円の損害賠償を提起し、今年3月、地裁は「院長が故意に虚偽の診断をした」として、25万円の支払いを命じた(控訴中)。

 男性B氏も「医療問題弁護団新宿セントラルクリニック対策班」の支援で提訴した。B氏は3年前、ある女性との真剣交際を考え、性病の症状はなかったが、念のために性病検査を受けた。血液検査の結果、クリニックはクラミジアと診断し、大量の薬を処方。しかし、検査機関による検査結果はB氏に示さず、医師が作った診断書を示しただけだった。

 法廷でB氏は「1か月以上、指示通りに薬を飲んだのに治らないので不審に思った。クリニックで作成された検査結果報告書は、検査会社が作った紙ではなかったのでおかしいと思った。セカンドオピニオンとして別の病院で調べてもらったら、クラミジアではなかった。『カットオフ詐欺じゃないですか』と言われた」と証言した。

 カットオフ値とは国が定めた陽性、陰性を分ける値。クラミジアの値は0.90で、それより上の値が出ると陽性となる。検査機関の検査結果報告書には0.90以下は陰性と説明があるが、B氏の2回の検査結果は0.86、0.46だった。

 しかし、同クリニックが作成した診断書ではカットオフ値は0.00だった。B氏は「医者が基準値を0.00と言うのだから、間違いないと思った。でも後で本当は0.90が基準値だと知った。医者が健康な人に性病だとうそをついた」と語る。

 一方、同クリニック院長は「医者は専権事項として診断できる。検査結果と問診を含め、総合的に判断してクラミジアと診断した。0.90というカットオフ値が間違っている。私の基準値は0.00。数千人に診断を下してきた」としている。

 7月には3人目の“被害者”C氏の裁判も始まるという。」


2015年7月28日に尋問が行われ,結審し,8月19日に判決が下されるということです.

カットオフ詐欺とは,カットオフ値を低くすることで,本来陰性の人を陽性と診断し,必要のない治療を行い,治療費を支払わせるものです.

院長の言い訳は破綻しています.

「ヒタザイム クラミジアAb‐IgM」の添付文書には,次のとおり記載されています.

「ヒタザイム クラミジアAb-IgMは酵素免疫測定法(ELISA)により血清中の抗クラミジア トラコマチスIgM抗体を検出するキットです。
 クラミジア トラコマチスL2株より精製したクラミジア外膜抗原を固相化したマイクロプレートのウェル内で検体中の抗クラミジア トラコマチスIgM抗体と反応させ、さらにアルカリフォスファターゼを標識した抗ヒトIgM抗体を反応させるとウェル内で抗体量に応じた固相抗原-抗体-標識抗体の免疫複合体が形成されます。これに基質(p-ニトロフェニルりん酸)を加えると検体中の抗体量に応じてp-ニトロフェノールが生成します。これを405nmの波長で吸光度を測定し、抗クラミジア トラコマチスIgM抗体の有無を判定します。判定は、陰性対照血清の吸光度から求めたカットオフ値と対比して行います。」


「下記の判定表に従い、検体を判定して下さい。ただし、0.90~1.09のインデックスを示す検体は疑陽性(±)とし、再度新しく採血した血清により再検査するなど注意して判定して下さい。

インデックス     測定結果
1 . 1 0 以上      (+)
0 . 9 0 ~ 1 . 0 9  (±)
0 . 9 0 未満      (-)

 抗体測定においては、ウィンドウ・ピリオド(感染後抗体が検出できる量までになる期間)及び免疫機能低下により抗体産生能が低下している場合では、測定結果が陰性になる場合もあります。」


院長は「私の基準値は0.00。」と証言したことから,院長は誤った自己流の考えで故意に誤った診断を行ったことが認定できます.しかも,「数千人に診断を下してきた」と証言しているのですから,被害者はおそらく数千人にのぼるものと思われます.被害者と思われる方は医療問題弁護団(電話03-5698-8544)に相談されてはいかがでしょうか.

谷直樹


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by medical-law | 2015-06-01 21:22 | 医療事故・医療裁判