夏虫色と臙脂色
(指貫は紫の濃き 萌黄 夏は二藍 いと暑き頃 夏虫の色したるも涼しげなり)
夏虫色自体は,涼しい色です.
この夏虫色に臙脂色をあわせた本のカバーがあります.
夏草色と臙脂色は,補色関係にあり,強烈で,目立ちます.出版社が書店に置いたときの効果を狙ったのでしょう.
しかし,購入して書棚に置くと落ち着きません.
私が学生の頃読んだ法律の本,我妻榮氏の「民法講義」,團藤重光氏の「刑法綱要」,兼子一氏の「新修民事訴訟法体系増訂版」などは,内容にふさわしい格調高い立派な装丁でした.
時代は変わりました.本は購入したらカバーを捨てるものなのでしょう.
夏虫色と臙脂色のカバーの本は,福田剛久判事(現在高松高裁長官),高橋譲判事と中村也寸志判事の編著「医療訴訟」(最新裁判実務体系第2巻)です.
昨年8月に発刊された本で,現時点のスタンダードです.実際の医療裁判は,判例の集積の上に行われていますので,このように判例を収集・分析した書籍は,必読です.内容は充実しています.補色で目立たせなくても,購入される本です.
野菜煎餅で知られる京菓子司末富本店に暖簾はかかっていません.派手すぎず斬新であること,意匠にはいろいろな要素を加えながらも見た目がスッキリしていて上品であることを追求し,池田遥邨画伯が到達したのが「末富ブルー」の包装紙です.
なお,いささか手前味噌になりますが,前掲「医療訴訟」に廣谷章雄判事が執筆した「注意義務違反」の項の参考文献には,私が書いたものもあげられています.
谷直樹
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