弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

厚生労働省,高血圧症治療薬ブロプレスの誇大広告で武田薬品工業株式会社に対し改善命令の行政処分

厚生労働省は,2015年6月12日,「医薬品医療機器法違反業者に対する行政処分について」を発表しました

「厚生労働省では、本日付けで、武田薬品工業株式会社に対し医薬品医療機器法第72条の4第1項の規定に基づき、別紙のとおり行政処分を行いましたので、お知らせします。
今般の処分は、同社が作成した広告が誇大広告と認められることから、業務改善命令を行うものです。
なお、誇大広告により、医薬品医療機器法第66条違反で行政処分を行うのは、今回が初めての事例です。」


「違反事実
武田薬品の高血圧症治療薬「ブロプレス」(注1)に係る広告(「CASE-J 試験」(注2)の結果を活用した広告等)が、医薬品医療機器法で禁止している「誇大広告」に該当すること。(医薬品医療機器法第66 条第1項違反)
(注1)ブロプレス錠(一般名:カンデサルタン)の効能・効果:高血圧症、腎実質性高血圧症、慢性心不全(軽症~中等症)
(注2)「ブロプレス」と既存の治療薬「アムロジピン」とを比較した大規模臨床試験

違反広告の内容
・ 自社製品と他社製品の脳卒中等の発現率のグラフについて、統計的な有意差がないにもかかわらず、自社製品を長期間服用した場合の発現率が他社製品を下回る(他社製品のグラフと交差する)ことを強調するため、交差部分に「矢印」を用い、これを「ゴールデン・クロス」という最大級の表現で強調した。
・ 広告で用いたグラフは、正しいグラフに比べずれており、自社製品の脳卒中等発現率が低くみえる。
・ 「切り札」という強い表現で、「糖尿病」など本来の効能効果でない副次的効果を端的に提示。

処分内容
第一種医薬品製造販売業の改善命令(医薬品医療機器法第72 条の4第1項)
① 広告等の審査体制について、内部職員による社内審査に止まらず、外部の有識者等も含めたものに整備すること。
② 上記審査体制の下、新規に作成する広告等だけではなく、過去に作成した広告等についても、外部有識者の意見等も踏まえ最新の知見に基づく見直しが速やかかつ継続的に行われる審査体制・社内体制を整備すること。
③ 再発防止のため、広告等の作成・審査に携わる社員及び管理職の者に対し、医薬品医療機器法を始めとする法令、通知及び業界自主基準を改めて周知徹底するとともに、適切な教育訓練の一層の充実を図ること。
④ 上記1から3までの再発防止に係る改善計画については、改善命令発出後1か月以内に、厚生労働省に提出すること。」


武田薬品は,誇大広告にあたらないとしていましたが,ついに誇大広告と認められ,やっと改善命令がでました
CASE-Jそのものについても,京都大学大学院医学研究科の由井芳樹氏らから重大な疑義を指摘されています.


谷直樹


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by medical-law | 2015-06-14 09:02 | コンプライアンス