津地裁四日市支部平成27年6月24日判決,名大の昇圧剤漏出の過失認め,高次脳機能障害は否定(報道)
「手術中の医療器具の破損が原因で高次脳機能障害が残ったとして、三重県四日市市の少年(15)が、名古屋大に6200万円余の損害賠償を求めた訴訟の判決で、津地裁四日市支部の岡田治裁判長は24日、「脳機能障害による知的障害などは認められない」として、169万円の支払いを除いて請求を棄却した。
判決によると、少年は1歳9カ月の2001年9月、名古屋大病院で肺動脈狭窄の手術を受けた。その際、昇圧剤を投与していたシリンジ(注射筒)の接続部が破損したため、血圧が急激に低下し、3カ月にわたって意識障害が続いた。
判決ではその後の発達検査の結果などから、原告が主張する知的障害や言語理解の低下を認めなかった。ただし、シリンジの破損については「医師らは昇圧剤が漏出しないか事前に安全性を確認する義務があった」と過失を認定。入院期間のうち64日間は事故と因果関係があるとして、付き添い看護費や慰謝料の支払いを命じた。」
上記報道の件は,私が担当した事件ではありませんので,上記報道の限りで判断するしかないのですが,高次機能障害の有無についての事例判決と理解できます.
「脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾病の発症の事実が確認されていること」については争いがなさそうですが,「現在、日常生活または社会生活に制約があり、その主たる原因が記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害」という高次機能障害の主要症状の点が立証不十分と認定されたのでしょう.微妙なケースだったのでしょうか.
なお,高次機能障害の診断には「MRI、CT、脳波などにより認知障害の原因と考えられる脳の器質的病変の存在が確認されているか、あるいは診断書により脳の器質的病変が存在したと確認できること」が原則として求められますが,絶対不可欠というわけではありません.
谷直樹
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