日曜美術館 夢の応挙 傑作10選
番組の選んだ10選は以下のとおりです.
「龍門鯉魚図」
「雪松図」
「幽霊図」
「牡丹孔雀図」
「写生図巻(甲巻)」
「藤狗子図」
「遊虎図」
「松に孔雀図」
「大瀑布図」
「氷図」
根津美術館の「藤花図屏風」はトップ10から落選です...
1 大乗寺の「龍門鯉魚図」(二幅)
左は、写生(スケッチという意味ではなく,リアル・客観写生・精密写生の意味で)の達人応挙らしく、水の中にいる鯉がリアルに描かれています.
右は、一見すると縦の線のみ...よく見ると鯉が隠れています.描き残しで滝の反射を描き、滝を登る鯉を見え隠れで描いています.鯉がいるから,縦の線が滝と光の反射に見えるのです.
左はすごいですが、右はもっとすごいです.
2 三井記念美術館の「雪松図」
金地に右隻の雄松、左隻の雌松の対比は、さすが国宝の品格です.墨のぼかしが美しい.
松につもるふんわりした雪は塗り残しです.雪は描いていないのです.雪から部分的に表れる鋭い松の葉を描くことで、ふんわりした雪を表現しています.
3 カリフォルニア大学バークレー校美術館の「幽霊図」
病弱な妻お雪を障子越しに見て描いたものと言われています.足を描かないことで幽霊を描く.これも引き算の手法です.
4 相国寺承天閣美術館の「牡丹孔雀図」
孔雀、牡丹、岩、それぞれの質感がすばらしい.
孔雀の青い羽は、下絵の墨のグラデーションの上に岩絵の具の群青を塗ったもの.
種明かしされても感心です.
5 「写生図巻(甲巻)」
実物を観察して描いたものです.応挙の手の内が見えます.
6 「藤狗子図」
藤の花と2匹の子犬.美しく愛らしい作品です.
こういう画を描ける画家はきっと幸せな人でしょう.
7 金毘羅宮の障壁画「遊虎図」
実物の虎を見ることができず、虎の毛皮と猫のしぐさから描いたもの.
「水呑みの虎」もいます.
虎がかわいらしいのは、モデルが猫だからでしょうか.
8 大乗寺の障壁画「松に孔雀図」
作風に変化があります.実物大の孔雀は迫力です.勢いのある画です.
松の幹は,精密写生ではなく,望遠レンズで撮影したときのぼけのような表現です.
葉は緑色にみえる墨を、枝は赤茶色にみえる墨を使っているとのことです.
眼病を患った晩年の作品です.
9 相国寺承天閣美術館の「大瀑布図」
手前に曲げて掛ける、ユニークな発想です.
精密写生とはちがうように思いますが、リアルの滝を超える滝です.
10 大英博物館の「氷図」
墨の濃淡で奥行きを描き、鋭い線から氷のひび割れ、冷気が伝わってきます.
これは、風炉先屏風で、90度に曲げても、不思議なことに線は折れ曲がりません.計算された線です.
最後にこれをもってきた番組の意図がわかります.
すごいけどわかりやすい.わかりやすいけど本当にすごい応挙です.
応挙のどこがすごいのか.
写生雑録帖(懐帖)を見ると、応挙が、実寸を計測し、構造と習性を研究していたことがわかります.
しかも、リアルな精密写生の技術、墨の技法のみならず、計算された卓越した構成力、技術力、そしてなにより、ものの本質を表現する思想・感性が応挙のすごさと思いました.
7月19日午後8時から再放送があります.
谷直樹
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