弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

腫瘍用薬処方時の体重間違い

「医療安全情報No.104」(2015年7月)「腫瘍用薬処方時の体重間違い」は,「腫瘍用薬を処方する際、患者の体重を正しく入力しなかったため、過量投与された事例が4例報告されています。」と注意を喚起しています.

事 例 1
医師はオーダリング画面で患者A(1歳)にオンコビン注射用の処方を行う前に、同一疾患・同一プロトコルで加療中の患者B(3歳)の電子カルテを参照した。その後、参考にした患者Bの身長と体重で算出した体表面積に基づく薬剤量を、そのまま患者Aに処方した。時間外の処方であったため、薬剤部では体重のチェックが行われずに、病棟に薬剤が交付された。看護師は指示の通り調製を行い、医師が静注した。その後、薬剤部が確認した際に、患者Aの身長と体重で計算した量よりも実際の投与量が多いことに気付き、医師に問合せたがすでに投与は終了していた。

事 例 2
腫瘍用薬の処方は、患者の身長・体重を入力すると体表面積が計算され、薬剤量が算出されることになっている。外来時、医師は患者の体重が測定されていなかったため、「99kg」と仮の体重を入力し、その後変更するつもりでエルプラット点滴静注液を処方した。投与当日、医師は処方の体重を「43.1kg」と修正した。しかし、すでに薬剤部で調製が終了しており、修正した体重は反映されないまま患者に投与された。その後、薬剤師が投与量を再度計算し、患者の体重で計算した量と実際に投与した量が違うことに気付いた。


そのほか,看護師が誤って同姓患者の体重を入力し,医師が登録された体重で処方した例,51.5kgを61.5kgと誤入力した例も報告されています.

過ぎたるは及ばざるが如しと言いますが,こと薬剤に関しては,過量投与は過少投与より危険と言えるのではないでしょうか.
私は,以前,(抗がん剤ではありませんが)薬剤の過量投与に因る転倒の事案を担当し,交渉し示談で解決しました
今は,或る薬剤の過量投与に因る遷延性意識障害の事案について,患者側を代理して損害賠償請求訴訟を担当しています.


谷直樹


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by medical-law | 2015-07-18 13:04 | 医療事故・医療裁判