千葉地裁平成27年10月16日判決,説明義務違反否定(報道)
「茨城県の男性が十分な説明がないまま気管切開手術を受け、声が出なくなるなど精神的苦痛を受けたとして、男性の妻が手術した国保旭中央病院を運営する旭市を相手取り、慰謝料などを求めた訴訟の判決が16日、千葉地裁であった。岸日出夫裁判長は「医師はできる限りの時間をかけて、必要な説明をした」と認定し、原告の訴えを棄却した。
判決によると、男性=2012年に死亡=は08年3月、同病院で筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断され入院。同年4月、気管を切開して人工呼吸器を付ける手術を行い、声が出なくなった。男性の妻は「医師が適切な説明をせず、手術を受けるか決める自己決定権を侵害された」と主張したが、岸裁判長は「医師に説明義務違反はなかった」と判示した。」
私が担当した事件ではないので事実関係は分かりませんが,人工呼吸器を付ける手術を行う場合に必要な説明が何で(義務の内容の認定),それをどのように説明したか(事実の認定)が問題になる事案だと思います.
人工呼吸器をいったん付けると,取り外すことは死を意味しますので取り外せなくなります.そこで,その患者は延命できますが,動けない状態で長く生きることになります.「身動きできない生」と「死」のどちらを選ぶかは患者の自己決定権です.普通の医師は,人工呼吸器を付けたらどうなるかを説明しているはずですが,訴訟になったということからすると,患者家族には「身動きできない生」が長期間続くこと,それがどのようなことなのか,が正確に伝わっていなかったのではないでしょうか.
なお,必要な説明」とは,患者家族が説明を理解したことを確認することまで含むはずです.この報道の件はどうだったのでしょうか.
谷直樹
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