弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

日付なしの死亡診断書を用意した医師と日付けを記入した看護師らを医師法違反容疑で書類送検(報道)

NHK「日付なしの死亡診断書用意 医師法違反容疑で書類送検」(2016年2月5日)は,次のとおり報じました.

「三重県名張市の特別養護老人ホームの嘱託の医師が、日付を入れていない死亡診断書をあらかじめ作って施設側に渡し、死亡確認をせずに遺族に交付したとして、警察はこの医師など3人を医師法違反の疑いで書類送検しました。
書類送検されたのは名張市の特別養護老人ホーム「名張もみじ山荘」に嘱託で勤務するA医師(73)と、施設の職員で36歳と48歳の看護師2人の合わせて3人です。
警察によりますと、3人は去年、入居していた90代の女性と80代の男性が亡くなった際、死亡確認をせずに死亡診断書を交付したなどとして、医師法違反の疑いがもたれています。日付を入れていない死亡診断書を、医師があらかじめ作って施設側に渡し、亡くなったあとに看護師が日付を記入していたということです。去年11月に三重県が刑事告発したのを受けて警察が捜査していました。
調べに対し、医師は「夜間に往診をしたくなかったし、遺族に早く遺体を引き渡してあげたかった」と、容疑を認める供述をしているということです。警察によりますと、5年前の施設の開設以降、書類送検された分を含めて合わせて19人の死亡診断書について同じような不正が確認されたということです。」


死亡診断書(死体検案書)は,人の死亡に関する厳粛な医学的・法律的証明であり,死亡者本人の死亡に至るまでの過程を可能な限り詳細に論理的に表すものとされています.
医師法第20 条は,「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら
出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後二十四時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。」と定めています.なお,通知で「医師法第20条ただし書は、診療中の患者が診察後24時間以内に当該診療に関連した傷病で死亡した場合には、改めて診察をすることなく死亡診断書を交付し得ることを認めるものである。このため、医師が死亡の際に立ち会っておらず、生前の診察後24時間を経過した場合であっても、死亡後改めて診察を行い、生前に診療していた傷病に関連する死亡であると判定できる場合には、死亡診断書を交付することができる」とされています.

この医師は,生きているうちに,死因などを記入し,死亡日時を空欄にした死亡診断書を特別養護老人ホーム「名張もみじ山荘」側に渡していたというのですから,医師法違反にあたります.


谷直樹


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by medical-law | 2016-02-05 23:51 | 医療