弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

新発田病院のガーゼ残置事故が調停で解決(報道)

新潟日報「新発田病院医療事故、調停成立へ」(2016年2月10日)は,次のとおり報じました.

「県立新発田病院は10日、右大腿(だいたい)骨の手術をした女性患者の体内に27年間ガーゼを放置した医療事故で、民事調停が成立する見通しになったと発表した。女性の右膝は可動域が4分の3程度で、正座できない後遺症がある。損害賠償額は約870万円。県は県議会2月定例会に関連議案を提出する。

 病院によると、女性は1987年に新発田病院で右大腿骨の固定手術を受けた。病院はその際に、血を拭くためのガーゼを置き忘れたという。2014年に別の病院で右大腿骨の腫瘍を摘出したところ、ガーゼが発見された。

 県は昨年12月、新潟簡裁に民事調停を申し立てた。今年1月に裁判所の調停案が示され、女性側が同意した。県立新発田病院の石附由美子事務長は「明らかに病院側のミスで後遺症を残す結果となり、大変申し訳ない。今後は再発防止と安全な医療の提供に努めたい」と話している。」

本件は,私が担当したものではありません。
ガーゼ残置事故は,過失が明らかで,賠償金額に争いがあることが多いので,交渉,医療ADR,調停などになじむと思います.

民事調停で,弁護士が代理人になることは少ないと思います。
責任に争いがなく,金額だけが争点の事案で,最初から弁護士が患者側の代理人としてついている場合,調停ではなく,直接の示談交渉で解決することが多いと思います.

賠償金額が少額で費用の関係で弁護士をつけられない場合,弁護士会のADR,裁判所の調停が,有用です.
民事調停は,民事に関する紛争につき,当事者の互譲により,条理にかない実情に即した解決を図ることを目的とする手続きです.非公開で行われます.
民事調停は,裁判官1名と調停委員(2名以上)が構成される調停委員会が手続きをすすめます.
当事者間に合意が成立する見込みがない場合は,調停不成立となります.
裁判所が,調停に代わる決定を行うこともできますが,医療過誤では,この決定はまず行われません.

調停不成立のときに,申立人がその旨の通知を受けた日から2週間以内に調停の目的となった請求について訴えを提起したときは調停の申立ての時にその訴えの提起があったものとみなされ,時効が中断します.
また,この2週間以内に訴えを提起すると,調停の申立てについて納めた手数料の額に相当する額は納めたものとみなされ,訴訟提起の際に貼付すべき印紙の金額が安くなります.
この段階で相談にみえる方がいますが,短期間で訴状を作成し,提訴するのは大変です.


 谷直樹


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by medical-law | 2016-02-11 00:25 | 医療事故・医療裁判