弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

ガーゼの放置で刑事告訴(報道)

毎日新聞「帝王切開で 産婦人科院長を女性側告訴」(2016年2月13日)は,次のとおり報じました.

小倉南区の産婦人科医院で、帝王切開で出産した女性(33)の体内にガーゼが2週間以上放置されていたことが12日、分かった。手術した男性院長(63)が共同通信の取材に認めた。女性側は同日「後遺症で妊娠が難しくなった」として業務上過失傷害容疑で地検小倉支部に告訴状を提出した。

 院長や女性の代理人によると、女性は2012年4月1日、帝王切開手術で次男を出産。その際、院長が止血で使った約25センチ四方のガーゼ1枚を取り出すのを忘れた。女性は退院後の同16日、腹部が痛み、搬送先の別の病院でガーゼを取り出した。ガーゼの周囲は化膿していたという。

 告訴状によると、ガーゼの放置に伴い、腸と子宮が癒着し卵管の病気を患い、自然妊娠が難しくなったと主張。院長は「後遺症に関する責任についてはノーコメント」とした上で「確認を怠ってガーゼを体内に残してしまい申し訳ない」と謝罪した。

 女性は昨年6月、院長に損害賠償を求める訴訟を福岡地裁小倉支部に起こしている。」

 本件は私が担当したものではありません.私は,ガーゼ残置事案の刑事告訴をお引き受けすることはありません.私が刑事告訴をお引き受けしたのは,誰が見てもきわめて悪質な事案だけです.

 ガーゼの残置について過失は明らかですので,報道の件は,後遺症との因果関係が争いなのでしょう.刑事告訴にいたるまでいろいろな経緯があることと察します.

【追記】
読売新聞「帝王切開でガーゼ残し縫合、患者炎症…業務上過失傷害容疑で医師を書類送検」(2017年2月7日)はつぎのとおり報じました.

「北九州市小倉南区の産婦人科医院で帝王切開手術を受けた女性患者(34)の体内にガーゼを残し、炎症を起こさせたとして、福岡県警は6日、同医院を運営する医療法人理事長で、手術を担当した男性医師(64)を業務上過失傷害の疑いで福岡地検小倉支部に書類送検した。

 捜査関係者によると、医師は2012年4月、女性の緊急帝王切開手術を行った際、女性の体内に約25センチ四方のガーゼを残したまま縫合し、ガーゼの周辺に炎症を起こさせた疑い。女性は約2週間後に強い腹痛を訴え、別の病院でガーゼを取り出した。医師は容疑を認めているという。

 女性は医院側を相手取り、約2200万円の損害賠償を求める訴訟を福岡地裁小倉支部に起こし、昨年12月、医院側が慰謝料350万円を支払うことで和解が成立した。」


示談が成立していますから,起訴はないでしょう.

 谷直樹


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by medical-law | 2016-02-13 21:44 | 医療事故・医療裁判