「医師法第21条の規定の見直しに関する日医の見解について」
日本医師会医事法関係検討委員会の提唱する改正案は,以下のとおりです.
「【医師法】
○医師法第21条
「医師は、死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して犯罪と関係ある異状があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。」
(参照)現行条文:医師は、死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。
○ 同第33条の2(罰則)から第21条違反を削除
【保健師助産師看護師法】
○ 保健師助産師看護師法第41条
「助産師は、妊娠四月以上の死産児を検案して犯罪と関係ある異状があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署にその旨を届け出なければならない。」
(参照)現行条文:助産師は、妊娠四月以上の死産児を検案して異常があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署にその旨を届け出なければならない。
○ 同第45条(罰則)から第41条違反を削除」
業務上過失致死罪ももちろん「犯罪」ですから,例えば薬の取り違えによる患者の死亡が疑われるとき,外科手術の過誤による死亡が疑われるときなどは,検案して業務上過失致死罪と関係ある異状があると認めたときにあたり,届出義務があることになります.
日本医師会医事法関係検討委員会は,医師法第21条の立法目的が犯罪捜査の端緒を警察に提供するという公益上の要請から医師に課されたものであることを認めつつ,たとえ犯罪の端緒を提供するだけの届出でもそれを契機に刑事訴追に発展する可能性のある場合には届出を拒否できる権利があるべきとする考えから,罰金刑を背景とする義務ではなくて倫理上の義務に止めるべきと主張しています.
さらに,「当委員会は、この機会に政府に対して、次の段階として、死亡診断、死体検案の概念の整理を含めた医師法全体の見直し作業およびさらには、生命・身体傷害を伴う医療事故全てに業務上過失致死罪を適用することの相当性(例えば過失の程度が重くない事案を親告罪とする工夫なども含めて)につき、時代にあった法律改正作業を一刻も早く開始することを強く希求するものである。」と結んでいます.
(1)届出義務のある範囲を明確化することと(2)届出義務違反が処罰されないようにすることは,別個のことです.
異状死として届出がなく,問題のある外科手術が繰り返され,多くの患者が亡くなった事案についてどのように考えるのでしょうか.
日本医師会医事法関係検討委員会の提唱する上記改正案は,医師の支持は得られても,国民の共感・支持を得るのは難しい内容となっているのではないでしょうか.
谷直樹
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