仙台高判平成28年2月26日、山形県立河北病院の投薬再開義務違反を認め遺族の逆転勝訴(報道)
「山形県立河北病院(河北町)で血液の病気の治療を受けていた女性=当時(51)=が死亡したのは、投薬治療が不適切だったためだとして、遺族3人が県に計約4700万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁は26日、請求を退けた一審山形地裁判決を変更し、計2365万円の賠償を県に命じた。
病院は2002年12月に症状が改善したとして、治療に有効な薬の投与をやめた。小野洋一裁判長は判決理由で「03年2月時点で、検査結果から病気の再発は明らかで、投薬を再開する義務があったのに怠った」と指摘し、病院側の過失を認定した。」
これは、私が担当した裁判ではありませんので詳細は分かりませんが、検査結果が残っていると血液疾患の治療義務違反を認定しやすい、といえます。
なお、一般に、地裁の裁判官がしっかり審理し判断していれば、高裁で逆転することは少ないです.
【追記】
河北新報「<投薬中死亡訴訟>遺族勝利 山形県に賠償命令」(2016年2月27日)は、次のとおり報じました.
「山形県立河北病院(山形県河北町)に通院していた同県村山地方の女性会社員=当時(51)=が死亡したのは、病院が適切な投薬治療を怠ったためだとして、遺族が県に約4720万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁は26日、遺族の請求を棄却した山形地裁判決を変更し、県に約2360万円の支払いを命じた。
小野洋一裁判長は「血液検査の結果は異常な数値を示していた。病院が適切に投薬治療を再開していれば生存していた可能性が高く、病院の過失は明らかだ」と述べた。
遺族側は判決後、仙台市内で記者会見し、夫は「今回の判決を再発防止につなげ、一人でも多くの患者の命を救ってほしい」と語った。県立病院課は「判決を精査し、対応を検討したい」と話した。
判決によると、女性は1994年、病院で赤血球などが減少する「再生不良性貧血」と診断された。投薬治療により快方に向かい、02年12月に投薬は中止されたが、約2カ月後に再発。03年10月に肺炎で死亡した。
地裁は14年12月の判決で「投薬を再開すると、血流が阻害されるなど致命的な副作用が生じる恐れがあった」と判断し、遺族が控訴していた。」
【再追記】
毎日新聞「河北病院訴訟 賠償命令に不服 敗訴の県が上告」(2016年3月11日)によると,山形県は10日、病院の過失を認めて県に賠償を命じた仙台高裁判決を不服として、最高裁に上告したとのことです.
明らかに無理な上告,上告受理申立はすべきではないと思います.
【再々追記】
毎日新聞「河北病院女性死亡訴訟 県の敗訴確定 上告不受理」(2016年7月15日)は次のとおり報じました.
「県立河北病院(河北町)で血液の病気の治療を受け2003年に死亡した女性=当時(51)=の遺族が県に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(木内道祥裁判長)は14日までに、県の上告を受理しない決定をした。12日付。病院のミスを認め県に約2300万円の支払いを命じた2審判決が確定した。
確定判決によると、女性は難病の再生不良性貧血で投薬治療を受けていた。病院は検査数値が改善したとして02年12月に一部の薬の投与をやめたところ、症状が再発。03年4月に投与を再開したが、同10月に合併症の肺炎で死亡した。1審山形地裁判決は請求を棄却。2審仙台高裁は、病院が03年2月の検査で再発を見落とし、その時点で投薬を再開しなかったため死亡したと判断、遺族逆転勝訴の判決を言い渡した。」
最高裁の判断は正しいと思います.
谷直樹
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