弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

臨床試験中止公表直前に800株を空売りした臨床試験リーダーの医師が3か月の停職処分となる(報道)

宮崎大学は、平成28年2月26日、医学部・教育職員(男性)に対し、国立大学法人宮崎大学職員懲戒等規程に基づき、停職3月の懲戒処分を行ったことを公表しました.

読売新聞「宮崎大医師、インサイダー取引で停職処分…自ら関与の目薬開発巡り」(2016年2月28日)は、次のとおり報じました.

「医師は2013年3月から、製薬会社「アールテック・ウエノ」(東京)と網膜の病気に関する目薬の臨床試験をしていた。15年3月、同社から臨床試験中止の連絡を受けた医師は、中止公表後の値下がりを見越して同社株800株を信用取引で売買し、約60万円の利益を不正に得たという。中止が公表されたのは、この取引の約1時間20分後だった。」

金融庁の認定した事実は、以下のとおりです.

「被審人(A)は、(株)アールテック・ウエノ(以下「アールテック」という。)との間で網膜色素変性に対するウノプロストン(開発コードUF-021)点眼液の第3相臨床試験(以下「本試験」という。)に係る治験契約を締結していた法人に勤務し、同治験に従事していた者である。

被審人は、平成27年3月9日、同契約の履行に関し、アールテックが本試験を中止することについて決定した旨の、アールテックの運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす事実を知りながら、法定の除外事由がないのに、上記事実の公表がされた同日午後3時30分頃より前の同日午後2時11分頃、B証券株式会社を介し、自己の計算において、アールテック株式合計800株を売付価額合計165万5700円で売り付けたものである。」



外資ファンドによるTOBで上場廃止となるまでの局面でおきた事件です.
医師の行為は紛れもないインサイダー取引で,その違法性は容易に認識できたはずです.


 谷直樹


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by medical-law | 2016-03-01 01:53 | コンプライアンス