岐阜市の病院,ステロイドパルス療法中,医師が血糖コントロールを失念して患者が死亡した事故を公表
70歳代後半の橋本脳症の女性患者にステロイドパルス療法を実施した,とのことです,
「1回目の治療で意識障害の改善傾向が認められたため、2回目の治療を実施したが、高浸透圧高血糖症候群(※3)を合併して死亡した。ステロイドパルス療法の副作用の一つに血糖値の上昇があり、当該患者さんは糖尿病を有していたため、治療中は血糖値の確認を含む血糖コントロールを行う必要があったが、適切に行えていなかった。」とのことです.
産経新聞「70代女性患者死亡で2千万円賠償へ 岐阜市民病院の医療事故」によると,「女性は糖尿病を患っていたため、血糖値を毎日、確認する必要があったが、治療開始前の1度しか計測していなかった。主治医は病院側の聞き取りに「失念していた」と話したという。冨田栄一院長は「適切な処置を取っていれば防ぐことができた。再発防止に努める」と述べた。」とのことです.
病院のサイトによると,再発防止策は,以下のとおりです.
「ステロイドパルス療法を実施する前に必要な血液・尿検査をセット化し、必要な検査項目が漏れることなく実施できるシステムを電子カルテ上で新たに構築し、稼働させた。
糖尿病を有する患者さんにおいては、ステロイドパルス療法を実施する前に血糖値とHbA1cを測定することを周知徹底した。
電解質(ナトリウム、カリウム、クロール)、血糖などの血液検査あるいは尿検査で生命に危険を及ぼす検査値や至急処置を要する検査値である場合、中央検査部の技師が直ちに検査をオーダーした医師に対処を促すよう連絡する既存のシステムを関係スタッフで再確認、徹底した。
糖尿病の専門診療科である総合内科に医療従事者がいつでも相談できる体制であることを周知徹底した。
ステロイドパルス療法を実施する際には、診療担当医師、薬剤を管理する病棟薬剤師、体温・呼吸・脈拍・血圧・血糖値を定時的に測定する病棟看護師の多職種でデータの共有と病態の把握、治療効果等について検討するとともに、それを診療録に記載して記録として残すことを義務付けた。特に意識障害のある患者さんは症状の訴えに乏しく、見落とされる可能性があるため、バイタルサインの変化に注意し、状態の変化とその原因、対応について、治療スタッフで共有することを徹底した。
当該診療科の部長回診(診療科部長、病棟師長、当該科医師が参加)において、週に1回は複数の医師で患者さんを診察し、回診記録を必ず残すことを徹底した。
医療安全管理のための職員研修会は同一の内容で3日間開催することとし(初日の講演内容を録画し、第2日目、第3日目はこの録画を供覧)、いずれかの日に受講することを義務化して全職員の医療安全への理解と実行の増進を図った。」
なお,賠償額は,20,331,479円と公表されています.
事故自体は残念ですが,事故後の対応については,適切な賠償と再発防止の策定が迅速に行われていますので,評価できると思います.
なお,本件は,私が担当したものではありません.
谷直樹
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