大学病院,CT読影で経過観察の必要性を指摘された患者の経過をみなかった例で謝罪
「名古屋大学医学部附属病院(以下「当院」という)において,2014年6月に行われたCT の読影レポートで指摘された陰影が経過観察されず,肺癌の診断・治療が遅れたと考えられる事例が発生しました。患者さんは2016年7月にお亡くなりになりました。
当事例は2016年3月に医療の質・安全管理部に報告され,同年3月及び4月の「医療の質向上と安全推進委員会(委員長:長尾能雅副病院長)」において審議されました。その結果,当事例についての第三者専門家による詳細な検証が必要と判断し,石黒直樹病院長に事例調査委員会の開催を進言しました。これを受け石黒病院長は,複数の外部専門家を主体とする事例調査委員会の招集を指示しました。事例調査委員会(以下,「本事例調査委員会」という。)は2016年6月に計2回開催され,2016年7月25日に調査報告書を取りまとめました。
当院では,この調査結果を受け,当院の診療行為が不適切であったと考え,深く反省するとともに,患者さんのご遺族に対し説明を行い,併せて謝罪いたしました。このたび,ご遺族のお許しをいただきましたので,調査報告書の概要を示し,本事例の経緯等について皆様にご報告申し上げます。
患者さんのご遺族にあらためて謝罪申し上げるとともに,上記調査報告書において示された提言を真摯に受け止め,再発防止に職員一丸となって取り組む所存です。」
NHK「名大病院 肺がん患者の経過見ずに死亡し謝罪」(2016年9月13日)は,つぎのとおり報じました.
「おととし6月11日の夜、高熱を訴えて病院の救急外来を受診した名古屋市の50代の男性にCT検査を行ったところ、右の肺に陰影があり、肺がんの初期の可能性があることがわかりました。このため経過観察の必要性が指摘されましたが、当時、担当した3人の医師は、高熱の原因だった前立腺炎の治療をしただけで、ほかの医師への引き継ぎも行いませんでした。
それから1年9か月たったことし3月、男性は、咳が続くことから再び名古屋大学医学部附属病院を受診したところ、進行性の肺がんと診断され、治療を受けましたが、7月に死亡しました。」
これは,私が担当した事件ではありません.
救急で各種検査を行う関係で,救急を受診した患者のなかには,(緊急にその場で対応が必要とはいえませんが)重大な疾患の可能性が疑われる患者も含まれています.
救急では,緊急に対応が必要な疾患を見逃さないことが優先されますが,緊急に対応が必要とはいえない疾患が疑われ,専門医の診療が必要な場合,専門医受診につなげることも求められています.救急は専門医受診につなげることまでが仕事です.
救急医にその点の意識が弱いと上記報道の件のようなミスがおきます.
これは,名大病院に限ったことではありません.救急医がおこしやすいミスの1つです.
ちなみに,癌の見落としが医療過誤として立証できる場合は,検査すべきなのに検査を怠ったという事案はすくなく,多くが,検査を行ったのに見落とした,連携ミスで診療が行われなかったという事案です.
報道の件は,実際に肺癌の診療が行われた2016年3月の21か月前にあたる2014年6月から肺癌の診療が行われていたなら,結果は異なっていたことが推測されます.賠償額はそのことを反映したものになると思います.
谷直樹
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