日本産婦人科医会,重大事故が相次いでいる産婦人科医師を指導(報道)

「○○市の産婦人科診療所で昨年までの3年以内に妊産婦2人の死亡が相次ぎ、日本産婦人科医会が指導に乗り出した。
妊産婦に重い障害が残った例も含め深刻な事態が続発しており、同医会は11日、役員らが現地を訪れて事情を聞き、改善策としてリスクの高い帝王切開は行わないなどの方針を確認した。同医会が医療機関へ直接指導に踏み切るのは初めて。
同医会は、開業医を中心とする全国約1万2000人の産婦人科医が加入する専門職団体。厚生労働省によると、日本の妊産婦死亡率は出産10万件に3・8人と極めて低い。同診療所での出産は年間約130件。50歳代の男性医師が一人で診療にあたっていた。特定の診療所で短期間に死亡や重度障害が続発するのは「通常ない深刻な事態」(同医会)で、異例の対応に踏み切った。
同医会は、問題の可能性があるとの情報が寄せられた出産4件を調査。カルテを調べたところ、2012年に産後に大出血した女性が死亡、3年後の15年には帝王切開を受けた女性が死亡していた。09年には帝王切開後に脳梗塞を起こした女性が半身マヒの重い障害を負ったほか、16年には帝王切開後の女性が出血性ショックで重症となったが、他の病院に搬送され命を取り留めた。女性4人はいずれも当時30歳代。
この日、松山市で取材に応じた同医会は、過失の有無は不明としたが、出血や血圧の管理、急変時の対応など、診療に不十分な点があったとの見方を示した。また、妊産婦が死亡した場合、詳細を報告するよう医療機関に求めているが、同診療所は1件について簡単な報告をしただけだった。
指導を受け、同診療所では今後、帝王切開は近隣の病院に任せ、正常 分娩 も来年3月までとする方針。同医会は、同4月にも、改善策が実行されているか実地調査を行う予定だ。同医会の石渡勇・常務理事は「もっと早く情報を把握し対応すべきだった」としている。」
毎日新聞「産婦人科医 日本医会が改善指導 3年間で2人死亡」(2016年12月12日)は次のとおり報じました.
「出産直後の女性が死亡するなど複数の重大事案が起きた○○市の産婦人科医院を、日本産婦人科医会の幹部らが11日に訪れて調査を実施し、改善を指導した。医会幹部の立ち入り指導は異例といい、石渡勇・医会常務理事は取材に対し「3年間で死亡事案が2件相次いだことは異常。非常に重く受け止めている」と話している。国内で年間約100万件ある分娩(ぶんべん)の前後に女性が死亡する事故は通常40件程度という。
医会などによると、同産婦人科は50代の男性医師が1人で診療にあたり、年間130~140件ほどのお産を手掛けている。「重大医療事故が相次いでいる」という情報が寄せられたことを受け、医会は今年9月、カルテなどの調査に着手。その結果、2009年以降の8年間で2件の死亡事案を含む4件の重大事故が起きていたことが確認された。
12年には当時30代の女性が出産後に出血が止まらず、市内の県立総合病院への搬送中に死亡。15年には当時30代の別の女性が帝王切開手術後に腹腔(ふくくう)内で大量出血し死亡した。この他、09年に当時30代の女性が麻酔を伴う帝王切開手術の後、脳梗塞(こうそく)になり、半身にまひが残った。16年も出産後の大量出血で当時30代の女性が一時重症となった例があったという。いずれも、生まれた子は無事だった。
男性医師はこれら4件のうち、15年に起こった死亡事案の概要を医会に報告したのみで、3件については医会に伝えていなかった。医会は詳しい報告を待つスタンスを取り、評価委員会を開くなどの対応はしていなかった。
医会は11日の調査後、「症状が重篤になる前に別の対応ができた可能性があり、結果的に判断が遅かったことになる」と指摘。血圧や脈拍数などを正確に測ることや、緊急時には速やかに県立病院に搬送する体制を整えることなどを改善点として示した。
その上で、今後の方針として、来年3月末までに分娩から撤退することを前提に、その後は同産婦人科では34週前後までの妊婦の検診のみ受け付け、分娩は県立の総合病院でしてもらう「セミオープンシステム」を提案した。
石渡常務理事は「地域の医師間のコミュニケーションが取れておらず、人手不足を補って助け合うことができていなかったことが残念」としている。男性医師は取材に対し「指摘された内容を重く受け止め、改善していかないといけない。提案については前向きに検討する」と述べた。【黒川優、成松秋穂】」
毎日新聞「<産科重大事故>リピーター医師の根絶困難 是正制度不十分」(2016年12月12日)は次のとおり報じました.
「○○市の産婦人科で出産直後の女性の死亡などの重大事故が相次いでいたことが明らかになった。医療事故を繰り返す「リピーター医師」は、重大な医療事故が多発した1999年ごろから問題視されるようになった。厚生労働省は2007年度から行政処分を受けた医師の再教育を義務付けたが、事故の繰り返しは明るみには出にくく、是正制度は十分とはいえない。
医療事故に備えて医師や医療機関の多くは保険に加入し、開業医には日本医師会が契約する医師賠償責任保険がある。過去の機関誌によると、73〜95年に患者側から100万円を超える損害賠償を2回以上請求された医師は511人に上る。
厚労省の審議会は02年、刑事事件にならなくても明らかな注意義務違反があった医療ミスを医業停止などの行政処分対象とする方針を示したが、実際に処分したのはわずか2件。ミスの繰り返しを理由としたのは12年の戒告1件だけだ。
昨年10月から医療事故調査制度が始まり、従来は特定機能病院などに限られていた死亡事故の報告義務が、全ての死亡事故に拡大された。しかし、事故の繰り返しをチェックしたり、外部が是正を求めたりする仕組みにはなっていない。
一方、日本産婦人科医会は04年から会員に重大事故の報告義務を課し、調査や改善指導する独自制度を作った。年間100〜600件台の報告があるが、報告するかどうかは医師の判断任せで、同医会に業務停止などを命じる権限もない。リピーター医師の排除は難しいのが現状だ。【清水健二】」
たまたま重大事故が相次いだとは考えにくい頻度です.
産科医・産科医療を守るためには,むしろ,積極的な指導が必要だったと思います.
もっと前に指導改善していたなら,後の事故は起きなかったかもしれません.
谷直樹
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