東博で等伯を観る

主題とか中心とかいうものが(おそらく)ない,墨だけで画かれた霞に浮かぶ(あるいは沈む)松林の不思議な画です.
牧谿という手本があっても,普通の画家なら,もっと画きこんでしまうことでしょう.
極限まで筆を抑え,霞で見え隠れさせることで,見えない松を想像させます.
「真田丸」と同時代を生きた絵師は,絢爛豪華な「松に秋草図屏風」なども画いていますが,この「松林図屛風」では絶品の背景のみを画き,人や動物は画きませんでした.
余計なものは何もありません.
伝統的な水墨画として必要なものもないのかもしれません.
下絵(草稿)であって完成ではないという説があるのもうなづけます.
観る者が画の中に容易に入りこめる(受け容れる)のは,これが大きな屏風画というだけではなく,主役がいない画だからかもしれません.
計算し尽くされた松林と空白を深く観る,深く感じる,深く考える.そういう画です.
強い筆致なのに,静寂で幽玄な世界です.
よいものを観ました.
「古今和歌集(元永本) 上帖」(国宝)も展示されていました.
地の和紙とかな文字の優美さが際立ちます.
本阿弥光悦の「舟橋蒔絵硯箱」(国宝)も展示されていました.
地味派手な硯箱で結構大きいです.
新年恒例の東京国立博物館の「博物館に初もうで」ですが,通常展示に加えてこのような国宝を観ることができ,お得感があります.
「博物館に初もうで」は2017年1月29日(日) までですが,「松林図屛風」の展示は2017年1月15日(日) までです.
2017年2月5日(日)のNHKEテレ「日曜美術館」は,長谷川等伯の特集です.
谷直樹
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