弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

民法改正と医療過誤に基づく損害賠償

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民法改正案が5月26日に参院本会議で可決し成立しました.

医療過誤に基づく損害賠償については,利率の変更が大きく影響を受けます.
現行は,遅延利息(=法定利息)が5%,中間控除も5%ですが,改正民法では,遅延利息(=法定利息)が3%,その3年後からは変動となり,中間控除はその損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率となります.
法定利率が引き下げられるのは債権者(患者)側に不利ですが,中間利息控除が引き下げられるのは債権者(患者)側に有利です。

1年後,2年後,3年後・・・の年収を現在価額に弾き直すために,中間利息控訴が行われます.
ゼロ金利時代に適合しない計算方法ですが,裁判所は,中間利息控除は法定金利と合わせる立場をとっています.
例えば,年収500万円の10年分は,5%なら「500万円×7.7217」,3%なら「500万円×8.5302」となります.
3%その後3年ごとの変動は,適切な改正と思います.

反面,遅延利息については患者側が不利になります。
例えば,年利5%の場合,5000万円の損害賠償で不法行為のときから3年で判決下された場合年5%遅延利息が付き5750万円となります。
年利3%の場合,5000万円の損害賠償で不法行為のときから3年で判決下された場合年3%遅延利息が付き5450万円となります。

【参考】
改正第404条
1 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは,その利率は,その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
2 法定利率は,年3パーセントとする。
3 前項の規定にかかわらず,法定利率は,法務省令で定めるところにより,3年を1期とし,1期ごとに,次項の規定により変動するものとする。
以下略


改正第417条の2
1 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において,その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは,その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により,これをする。
2 将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において,その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも,前項と同様とする。


谷直樹

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by medical-law | 2017-05-29 16:07 | 医療事故・医療裁判