無痛分娩事故の遺族(夫)からのお願い
2017年8月8日
厚生労働大臣 加 藤 勝 信 様
公益社団法人日本産婦人科医会 会長 木 下 勝 之 先 生
無痛分娩事故の遺族(夫)からのお願い
この度、無痛分娩の際に起きた事故に対し厚生労働省、ならびに日本産婦人科医会において再発防止の取り組みが開始された事につきうれしく思います。
今後、他の産婦や家族が私たちと同じような苦しみを受けることがないよう、実態調査を尽くしていただき、一日でも早く安全対策が定められることを期待し、私の経験から次の4点を述べさせていただきます。
1 医師、看護師の意識
私は、医師が妻を見ていてさえくれれば、と今も悔やんでいます。そばにいた看護師が無痛分娩のリスクを知らず、下肢のしびれを麻酔によるものと考えなかったことも悔やまれます。リスクの説明が不足していたのは、医師がリスクを軽くみていたからではないかと思います。ガイドラインが策定されることで、このような医師、看護師の希薄なリスク意識が改められることを願います。
2 リスクの説明
妻は、無痛分娩を行っているという理由でこのクリニックを選んだ訳ではなく、最初から無痛分娩を希望していた訳ではありません。このクリニックの医師から無痛分娩の提案があった際に、事前にリスクを感じさせる説明があれば、敢えてそのやり方を選んではいませんでした。わかりやすくリスクについて書かれた説明書のひな形を、ガイドラインにつけていただければ、選択に役立つのではないかと思います。
3 体制整備
妻は、仮に無痛分娩のリスクを知らされていたなら、無痛分娩を行うことになったら設備や体制の整った医院を選んでいたと思います。リスクがある無痛分娩を行うためは、相応の体制を整備することが必要だと思います。体制が整っていない医院での無痛分娩を制限することも必要ではないかと思います。
4 ガイドライン策定後の調査
ガイドラインが策定された後も、ガイドライン策定により実際にどのように変わったのか、ガイドラインが守られているのか、調査を行っていただきたく思います。
A
(連絡先)
〒160一0003東京都新宿区本塩町7番6号
四谷ワイズビル1階
谷直樹法律事務所
電話 03(5363)2052
上記文中の「ガイドライン」は,これから作成されるであろうと期待されるガイドライン・指針のことです.
【これまでの経緯】
2015年9月2日 無痛分娩事故
2017年5月12日 妊産婦死亡
2017年7月4日 「無痛分娩事故の遺族(夫)よりの要望書」
2017年7月26日 日本産婦人科医会回答
ご要望のありました医療体制につきましても、本会は、積極的に改善に向けての努力を続けております。また、今後も、より安全な無痛分娩に向けて取り組んでまいります。
2017年8月1日 塩崎厚生労働大臣の会見
8月中に研究班の第1回目の会議を開催し、無痛分娩の安全性をどのように確保していくか、具体策を検討したい。
2017年8月8日 「無痛分娩事故の遺族(夫)からのお願い」
【追記】
神戸新聞「無痛分娩の体制改善 遺族が厚労相に要望」(2017年8月10日)は,次のとおり報じました.
「神戸市西区の産婦人科医院で2015年9月、麻酔で出産の痛みを和らげる無痛分娩(ぶんべん)をした女性が亡くなった医療事故で、女性の夫(32)=東京都港区=が9日、加藤勝信厚生労働相や日本産婦人科医会の木下勝之会長に、無痛分娩の体制整備などを求める文書を送付したと明らかにした。
文書では、医師や看護師のリスク意識の改善▽策定するガイドラインに、無痛分娩のリスクについて記した説明書のひな型を付ける▽体制が整っていない医院での無痛分娩を制限する▽ガイドライン策定後も、どのように変わったか、ちゃんと守られているかを調査する-の4点を要望した。女性は無痛分娩で使用した麻酔が脊髄近くに達し、呼吸できなくなり、脳に損傷を負った。意識不明のまま、事故から約1年8カ月後に亡くなり、生まれてきた長男(1)も脳細胞がほぼ死滅し、今も重篤な状態が続いているという。(篠原拓真)」
読売新聞「無痛分娩事故、遺族が2度目の再発防止要望書」(2017年8月9日)は,次のとおり報じました.
「神戸市西区の診療所で2015年9月、出産の痛みを和らげる無痛分娩の麻酔後に重い障害を負い、今年5月に死亡した女性の夫(32)が、加藤厚生労働相らに改めて再発防止を求める要望書を提出した。
この遺族の要望書提出は8日付で、7月に続き2度目。今回は、安全体制が整わない医療機関での無痛分娩の制限や、安全指針の策定と、それが守られているかどうかの調査など具体策を求めた。」
谷直樹
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