弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

東京新聞,無痛分娩」医療体制確認を

東京新聞「相次ぐ重大事故 「無痛分娩」医療体制確認を」」(2017年9月26日)は,次のとおり報じました.

「お産の痛みを麻酔で和らげる「無痛分娩(ぶんべん)」で母子が死亡したり、重い障害を負ったりする事故が相次いでいる。厚生労働省は研究班を発足させ、実態の把握と安全に出産できるための体制づくりを検討しているが、妊娠中の女性にとっては、無痛分娩を選ぶかどうか、お産をどこでするかの判断は待ったなしだ。無痛分娩に詳しい麻酔科医の意見を聞き、事故が相次ぐ背景と選択の方法を探った。

 (小中寿美)

 事故は四月以降、次々と発覚した。いずれも麻酔後に容体が急変し、一部は民事訴訟や刑事告訴に発展している。「直後に急変した症例は、おそらく無痛分娩が直接的な原因」。都立多摩総合医療センターの麻酔科指導医、田辺瀬良美(せらび)さん(44)は話す。

 考えられるのは麻酔薬が血管内に入って起こる「局所麻酔薬中毒」や、脊髄の近くまで管が入り「全脊髄くも膜下麻酔」の状態になったこと。いずれも日本産科麻酔学会ホームページの「無痛分娩Q&A」に「まれに起こる不具合」として掲載されている。想定されるリスクというわけだ。

 「通常は麻酔薬を投与するたびに管を吸引し、血液や髄液が逆流しないことを確認する。少しずつ投与し、異変に気付いて対応すれば大事には至らない」と田辺さん。万が一急変したらスタッフを集め、心臓マッサージなどの救命に当たることが肝要という。

 しかし、母子を救えない事例が相次いだ。田辺さんは、背景に▽担当した医師が合併症の予防や対策に習熟していない▽人手が足りず麻酔後の監視が不十分▽急変時の訓練や準備をしていない-などの状況があったと推測している。

 無痛分娩が普及する欧米では施設の集約化が進み、産科の病棟に麻酔科医が常駐。いつ陣痛が来ても専門医が無痛分娩に対応する体制が整っているという。一方、国内は分娩の半数が診療所で行われ、麻酔科医は不足。人手を確保するため陣痛を誘発する「計画分娩」が行われ、陣痛促進剤を使うことが多い。子宮の収縮が強くなりすぎるなど副作用のリスクも加わる。

◆麻酔医の習熟必要

 日本産婦人科医会の調査によると、分娩全体に占める無痛分娩の割合は二〇一六年度が6・1%。国が〇八年に調査した〇七年の2・6%から急増。ニーズは確実に高まっている。

 心臓に持病があるなど出産にリスクがある女性の場合、無痛分娩を選択できれば帝王切開を避けられる可能性が出てくる。妊婦の負担を軽減できるのは大きなメリットで、「痛みや極度の疲労を避けられるなら、二人目を産んでもいいと考える人もいるはず」と田辺さんは話す。田辺さん自身、第二子の出産では無痛分娩を選択した。

 今は病院で行うすべての無痛分娩に携わる田辺さんだが、「こつをつかむのに苦労した」という。お産の進み方や痛みの感じ方は人それぞれ。無痛分娩の麻酔は投与が長時間にわたるほか、薬の量や種類を調整するなどの技術が必要になる。この技術に習熟した専門の医師は少なく、「体制が整わないまま、なし崩し的に広まったことが重大な事故につながったのでは」とみている。

 無痛分娩を考えている妊婦は、お産する場所をどう選べばいいのか。「病院の体制を必ず確認すること。医師が複数いて、可能なら麻酔科医が麻酔を担当しているところがいい」。帝王切開や器械分娩となった件数や合併症などのリスクについて尋ね、しっかり説明できるかどうかもチェック。計画分娩か自然の陣痛に対応するかも確認し、持病やアレルギーがある場合は申告する。「利益とリスクをよく考えて選択を」と助言している。

<無痛分娩> 脊髄と背骨の隙間に背中側から細い管を挿入し、局所麻酔薬と医療用麻薬を継続的に注入する「硬膜外麻酔」が一般的。お産の痛みを伝える脊髄に近いため、強い鎮痛効果がある。疲労が少なく産後の回復が早いとされる一方、頭痛や尿が出にくくなるといった副作用や、鉗子(かんし)・吸引分娩が増えるなどリスクも。保険適用外で10万円前後の追加費用がかかる。」



上記を整理すると,
▽担当した医師が合併症の予防や対策に習熟していない → 研修し習熟した医師を認定
▽人手が足りず麻酔後の監視が不十分 → 医療体制の充実した認定施設のみで実施
▽急変時の訓練や準備をしていない → 継続的研修義務
が必要となります.

合併症の予防や対策に習熟していない医師でも担当でき,人手が足りず麻酔後の監視が不十分で急変時の訓練や準備をしていない施設でも無痛分娩を実施できる現状を変える必要がありまう.


谷直樹

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by medical-law | 2017-09-26 22:55 | 無痛分娩事故