弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

『下鴨アンティーク 祖母の恋文』

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『下鴨アンティーク 祖母の恋文』(集英社オレンジ文庫,2016年)は,白川紺子氏の下鴨アンティークシリースの第3作で,4短編が収められています.
何れも,花,着物等の描写が具体的で,季節感が伝わってきます.夏蜜柑のシャーベット,茄子と鶏肉の唐揚げ,ゴーヤと鰹節の和え物,海老ピラフ,手作りドーナツ,最中,錦玉羹,イタリア風のそうめん,ズッキーニのマリネ,レモネード,氷で冷やした玉露,黒水晶のような水羊羹,琥珀糖,進々堂のレーズンと胡桃のパン,ゼリーポンチ,わらび餅,玉子サンドなど食べ物の記述も豊富です.これらは,作者の好物なのでしょう.
鹿乃,鹿乃の兄良鷹,良鷹の友人の慧のキャラが良いです.
謎解きというより,ファンタジーも加味されていますので,空気感にとっぷり浸る作品です.

「金魚が空を飛ぶ頃に」では,<白地金魚柄着物>の謎が解かれます.
季節は,宵山と夏休みを待つ頃です.
「梔子の白い花が宵口の闇にうすぼんやりと浮かびあがっていた。」
梔子は関東にない花です.
鹿乃の服装は,水色の地に白いよろけ縞の夏お召しに,帆船を描いた帯,碇をモチーフにした帯止めです.確かに海です.

「祖母の恋文」では,<十六 芥子色地格子柄帯>の謎が解かれます.
季節はお盆の頃です.
「仏壇の手前に精霊棚をしつらえ,蛍袋の花を飾った。」
蛍袋の花は,関東では赤紫色ですが,関西では白色です.
「錬鉄の門の脇にはあざやかな橙色の凌霄花が垂れ下がり,その手前には競い合うように百日紅が赤紫の花を咲かせている。」
鹿乃の服装は,ミントグリーンの地に,サイダーみたいな大小の水玉を散らした麻の着物に鷗柄の帯です.爽やかで涼しそうです.
送り火のときには,濃紺地の露芝文様の着物に,淡いレモンイエローの帯,きらきらとしたガラスビーズの帯止めに着替えます.夏の夜に合いそうです.

「山滴る」では,<春秋柄羽織>の謎が明かされます.
季節は,夏です.
「花器に凌霄花を生ける。それを古い桂籠に入れて,玄関にある柱に掛けた。」
「夏雪草である。細かな白い花が密生しているのが,ふんわりと草におりた初雪のように美しい。つやのある黒褐色をした古備前の花入に生けるとよく映える。」
黒谷町に出かけたときの鹿乃の服装は,白地にペールブルーの花柄がプリントされたシフォンワンピースというかわいいものです.これを着物のほうが好きと言い切ってしまう春野は相当の王子様です.
鹿乃の普段着は,露草色に白い大柄の矢絣が入った夏お召しに,あざやかな向日葵を描いた帯です.明るくて涼しげです.

真夜中のカンパニュラ」では,幽霊屋敷の謎が解き明かされます.
野々宮家の蹴上の別邸は,風鈴草屋敷と呼ばれています.
「白と青紫の風鈴草だ。小さな釣鐘の形をした,かわいらしい花である。」のですが・・・
季節は,「空はもう秋にさしかっている」頃です.
鹿乃ではなく,真帆の視線で進行します.

谷直樹

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by medical-law | 2017-10-29 06:02 | 趣味