湘南学園高校1年生のフィールドワーク(最新医療)
湘南学園高校では,「生命の尊厳」について考えるとともに,「一人一人が尊重され,人間らしく生きられる社会とはどういう社会か」というテーマをかかげ,各自の問題意識に即したフィールドワークを実施しているとのことです.
昨日,藤沢市松が丘の湘南学園に行って,高校生5人に,最新医療とくに先進医療について話してきました.
以下は,その内容です.
1 自由診療と保険診療
もともと医療は自由診療でしたが,保険診療により有効性と安全性な医療を受けやすくなりました.
医療技術の有効性と安全性を,臨床試験,臨床研究によって,調べます.
臨床試験,臨床研究は,有効性,安全性が確認されていないものをテストするのですから,(無効で危険かもしれないことを受けるのですから)もちろん無料です.
そのようにして,有効性と安全性が確認された医療(標準医療)だけが,保険診療の対象になります.
自由診療と保険診療を同時に行うと「混合診療」となり,全額患者の負担になります.
2 先進医療
「先進医療」として定められた約100の医療技術については,定められた約1000の医療機関で,全額患者の費用になりますが,先進医療を受けることができます 先進医療は保険診療と同時に行っても,混合診療にはならず,患者は保険診療については自己負担分だけ払えばよいことになります.
「先進医療」という名前が,優れた医療技術のような誤解を与えているのは,問題です.
「先進医療」は,有効性,安全性が確認されていない医療技術です.
3 先進医療の説明義務,インフォームドコンセント
医療は,専門家である医師が患者に情報を提供し,患者がそれを理解し,決定,同意する過程が重要です.
先進医療では,保険で行われる標準医療以上に,説明が必要です.
先進医療は,とくに期待が大きいので,有効性,安全性が確認されていない医療技術であること,リスクの具体的な内容・割合,他の手段について説明する必要があります.
詳しいペーパーが渡され丁寧に説明がされていますが,患者の期待が大きなため,正しく伝わっていない場合もあります.
一方的な説明ではなく,対話が重要です.
一般的ではない医療が行われた場合に,説明義務違反が認められた裁判例があります.
150万円~200万円の3例の裁判例がありますが,裁判になっていないものは,もっとあるでしょう.
4 医療事故と医療過誤
医療事故は,予期されない悪い結果が生じた場合です.
医療事故は,調査が行われ,原因が究明され,再発防止策が提案されます.
その医療事故のうち,過失があるものが医療過誤です.
過失とは,予期されない悪い結果について予見可能性があり,回避義務があるものです.
医療過誤は,被害者が請求すれば,賠償請求の問題になります.
弁護士を依頼して示談,訴訟が行われます.
5 先進医療の医療事故,医療過誤
先進医療でも,保険医療と同様に医療事故,医療過誤がおきます.
レジメンを誤った医療事故などが起きています.
6 手術支援ロボット
手術支援ロボットダヴィンチを使った手術は,2つを除いて保険診療ではありません.
一部が「先進医療」になっていますが,多くは「先進医療」にすらなっていません.
7 最新医療と標準医療
専門家は技術の進歩のために日々努力しています.
標準治療以上のものを求めて,最新の医療技術が開発されています.
そのようにして医療は進歩してきました.
ただ,最新医療は,開発途上のもので,必ずしも有効性と安全性が確認されたものではありませんので,期待が大きい反面,結果的に期待外れのこともありますし,悪い結果が生じることもあります.
最新医療がつねに良いもの,優れたものというわけではありません.
有効性と安全性が確認されている標準医療が基本です.
谷直樹
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