弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

新潟県立がんセンター新潟病院,電気メスの火花が気化した消毒アルコールに引火し熱傷を来した事案で調停成立

新潟県は,2018年2月8日,県立がんセンター新潟病院で,電気メスの火花が気化した消毒アルコールに引火し熱傷を来した事案について,829万8970円で調停が成立する旨公表しました.

「下記の医療事故に係る民事調停案件について、裁判所の調停案に双方が同意する見込みとなったことから、平成30年2月議会に損害賠償額の決定について提案します。

1 病院名  県立がんセンター新潟病院

2 患 者  新潟市在住の女性(40歳代)

3 事故概要
(1)  平成29年3月、肝がん治療のため全身麻酔下で開腹術を順調に終了し、引き続いて術前の抗癌剤治療に使用した中心静脈ポート(注)を抜去するため、アルコールによる皮膚消毒後、皮膚切開を行ったところ、電気メスの火花が気化したアルコールに引火し、右頚部、右肩部に熱傷を来した。
(2) 熱傷に対して植皮等の治療を行い、症状は改善したものの瘢痕が残存。
(3) 同年12月、解決を図るため民事調停手続を開始。(新潟市内の簡易裁判所)
(4) 同月、裁判所の調停案が提示され、患者が同意する旨意思表示。

※ 議決後、早期に民事調停が成立する予定。

[注 中心静脈ポート:心臓近くの中心静脈にカテーテルを留置し、必要な時に体外から接続して確実に薬剤等を投与できるようにするための器具]

4 損害賠償額(平成30年2月議会提案予定)
 8,298,970円


報道の件は私が担当したものではありません.
本件事故前から「電気メスによる薬剤の引火」(医療安全情報No.34)等で,引火事故への注意喚起はなされてきています.
日本外科学会医療安全管理委員会の「気管切開時の電気メス使用に関する注意喚起」では,「引火事故の要因として、1) 発火元(電気メス、レーザー)、2) 可燃物(アルコール系消毒剤、可燃性気管チューブ、体脂肪や凝固血液、など)、3) 助燃性の気体(高濃度酸素(30%以上や笑気の併用)が挙げられます。」としています.
過失が明らかな事案です.
東京では弁護士会の医療ADRによることが多いのですが,新潟県には医療ADRがありませんので,民事調停が選択されたものと思います.

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by medical-law | 2018-02-09 08:58 | 医療事故・医療裁判