弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

広島高裁平成30年2月16日判決,受診するも帰され腹部大動脈瘤破裂で死亡した事案、原判決を取り消し約3200万円の支払いを命じる(報道)

産経新聞「医師の過失認定、山口県の病院に3200万円賠償命令 原告側が逆転勝訴」(2018年2月16日)は,次のとおり報じました.

「平成23年に山口県防府市の県立総合医療センターを受診後、腹部大動脈瘤破裂で死亡した男性=当時(69)=の遺族が、治療が不十分だったとしてセンターに約6千万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、広島高裁は16日、約3200万円の支払いを命じた。1審の山口地裁は請求を棄却していた。

 野々上友之裁判長(退官のため三木昌之裁判長代読)は判決理由で、男性が病院を訪れた時にはすでに緊急手術が必要な状態だったと指摘。処置に当たった医師の責任を認め、「手術をすれば救命できた」とした。

 1審判決は、診察時に腹部大動脈瘤破裂の状態だったとは認められず、医師の過失を示す証拠はないと判断していた。

 判決などによると、男性は23年11月に腰の痛みを訴えてセンターを受診。帰宅後に意識を失って搬送され、死亡した。

 男性の次女(42)は判決後「父の死を無駄にせず、病院はベストな診療態勢を整えてほしい」と語った。」


上記報道の件は,私が担当したものではありません.九州合同法律事務所の小林洋二先生らです.→小林先生の解説はコチラ
野々上友之裁判長は四国電力伊方原発3号機の運転停止命令を下した判事で,昨年12月20日に定年退官しました.
裁判は証拠に基づきますが,医療過誤において,あまりにも厳密な証拠を要求するとかえって不合理な結果になります.原審判決がそのようなこのだったのでしょう.
裁判官には合理的な推論を積み重ねて事実を認定することが期待されます.この判決は,初診時に大動脈瘤破裂の状態にあったか(事実認定),適切な診療が行われていたなら結果は発生しなかったか(不作為の因果関係)について,参考になります.
【追記】
毎日新聞「医療過誤訴訟 県側の上告棄却 賠償判決が確定」(2018年11月17日)は次のとおり報じました.
「県立総合医療センター(防府市)で2011年に受診した男性(当時69歳)が死亡したのは、センターが適切な検査をしなかったのが原因として、遺族が運営者の県立病院機構に損害賠償を求めた訴訟で、県は15日、最高裁が県側の上告を棄却したと発表した。」
このように上告事由に当たらないことが明白な事案について上告するのはいかがかと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2018-02-17 07:15 | 医療事故・医療裁判