弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

堺市の病院,担当医師が病理検査の結果を見ず胃癌発見が約7か月遅れたことを発表(報道)

読売新聞「「胃がん」検査結果見逃す…堺市医療センター、治療7か月遅れ」 (2 018年2月15日)は,次のとおり報じました.

「地方独立行政法人・堺市立病院機構は14日、運営する市立総合医療センター(堺市西区)で、男性主治医が70歳代の女性患者の検査結果を見落とし、がんの発見が約7か月遅れる医療ミスがあったと発表した。

 女性は治療開始から約1年後に死亡。同機構は「治療の遅れを招いた」として遺族に謝罪した。

 発表によると、女性は16年2月、胃の痛みを訴え、同センターで胃の内視鏡検査と病理検査を受診。病理検査の担当医師は胃がんを見つけ、電子カルテに添付された報告書に記載したが、主治医がこれに気付かず、カルテに書かれた内視鏡検査の所見だけで胃潰瘍と判断した。

 約7か月後に女性が吐き気を訴えたため、別の医師が再検査した際、以前の検査結果に気付いた。女性は16年10月、胃の一部を切除する手術を受け、抗がん剤治療を続けたが、昨年9月に死亡した。

 主治医は既に退職し、別の病院に勤務中。調査に「内視鏡検査の結果が『胃潰瘍』と書かれており、そう思い込んでしまった」と話しているという。

 同機構は「ミスと死亡の因果関係は不明だが、がんは当初からかなり進行していたと考えられる」と説明。一方で、医師間の情報共有が不十分だったとして、病理検査結果の連絡体制やカルテの記載方法を見直すなどの再発防止策をまとめた。

 花房俊昭院長は「情報共有とチェック体制の不備で医療ミスを起こし、患者のご家族に深くおわびする」と陳謝した。」


報道の件は私が担当したものではありません.
連携ミスは癌の見逃しの典型的例です.
必ず病理検査記録を患者に渡して説明するようにすればこのような見逃しはなくなります.
民事の賠償責任については,見逃しと死亡との因果関係が問題になります.裁判になれば,約7か月の治療の遅れが死亡にどの程度影響したかが争点になります.病院が誠意ある対応を行えば,多くは示談交渉で解決すると思います.

谷直樹

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by medical-law | 2018-02-18 22:22 | 医療事故・医療裁判