弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

大津地裁平成30年3月1日判決,病理解剖契約にもとづく病理解剖記録の写しの交付義務否定

京都新聞「病理解剖記録の開示、遺族の訴え棄却 大津地裁判決」(2018年3月1日)は次のとおり報じました.


 「大津市の男性が、死亡した妻=当時(26)=の病理解剖をした滋賀医科大付属病院に解剖記録の開示を求めたのに拒否され精神的苦痛を受けたとして、同病院に慰謝料など154万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が1日、大津地裁であり、西岡繁靖裁判長は原告の請求を棄却した。
 判決によると、原告は2016年、妻の病状を見過ごした疑いがあるとして別の病院の責任を追及しようとしたところ、その病院から病理解剖記録の提出を求められた。
 西岡裁判長は判決で、滋賀医科大付属病院は解剖の結果を遺族側に伝えていることから、説明義務は履行されたと指摘。遺族が希望する解剖記録の写しを同病院が交付しなかったとしても債務不履行は認められず、請求には理由がないとした。」


病理解剖契約にもとづく病理解剖記録の写しの交付義務が争われた裁判です.
裁判所は,病理解剖契約締結の事実は認めましたが,その契約の内容として,病理解剖記録の写しの交付が契約当事者間で合意されていたとは認められない,と判断しました.この解釈が適切とは思えませんが,この解釈を前提にすれば,今後,病理解剖記録の写しがほしいと思う遺族は,病院が病理解剖記録の写しの交付を明確に約束したときのみ病理解剖を依頼することになるでしょう.

なお,国立大学法人の文書開示手続きを経た場合に,病理解剖記録の写しを開示することは,全く別の問題です.
この裁判で否定されたのは,あくまで病理解剖契約にもとづく病理解剖記録の写しの交付義務です.

谷直樹

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by medical-law | 2018-03-02 12:12 | 医療