弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

京都地裁平成30年3月27日判決,京田辺市の産科医院の件で因果関係否定(報道)

朝日新聞「無痛分娩時に障害、過失認める 賠償は棄却 京都地裁」(2018年3月27日)は,次のとおり報じました.

「無痛分娩(ぶんべん)時に適切な処置を怠ったため長女が重い障害を負ったとして、京都府京田辺市の夫婦が同市の「ふるき産婦人科」(昨年12月に休院)に約1億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が27日、京都地裁であった。藤田昌宏(まさひろ)裁判長は担当した男性院長(56)の分娩の過程での過失を認めたが、そのために障害を負ったとはいいきれないとし、夫婦の訴えを棄却した。

 判決によると、原告の女性(36)は2011年4月、麻酔で痛みを和らげる無痛分娩で、脊髄(せきずい)を保護する硬膜に細い管で麻酔薬を注入する「硬膜外麻酔」を受け、その後、陣痛を促す子宮収縮薬を投与された。その後、帝王切開で長女を出産したが、長女は脳性まひなどの重い障害を負い、14年12月に3歳で亡くなった。

 夫婦側は、分娩監視装置を装着していなかったため、胎児の心拍低下を見落として低酸素脳症にさせ、帝王切開も遅れたと主張。一方、医院側は、監視装置は装着していたがデータが残っていないだけで、帝王切開の時期も適切だったと反論していた。

 判決は、合理的な理由がなく多量の子宮収縮薬や高濃度の麻酔薬を投与し、分娩監視装置をつけたのは1度だけで再装着しなかったなどと院長の注意義務違反を認定した。一方、その過失が重い障害につながったとはいえないと判断した。

 判決後、原告の女性は「納得いかない。控訴し、因果関係について争いたい」と代理人弁護士を通じてコメントした。

 長女が脳性まひになった原因を分析した専門医らの委員会は「分娩中に低酸素症を発症し、陣痛促進や吸引分娩が影響した可能性も否定できない」とする報告書をまとめていた。



NHK「無痛分べんで医師の責任認めず」(2018年3月27日)は,次のとおり報じました.

「麻酔で痛みを和らげる無痛分べんで出産した子どもが、脳に障害が残ったのは医療ミスが原因だとして、両親が医師などに賠償を求めた裁判で、京都地方裁判所は、「医師に過失はあったが、脳障害の原因とまでは認められない」として訴えを退けました。
京都府京田辺市の30代の女性は7年前、市内の「ふるき産婦人科」で無痛分べんで女の子を出産しましたが、女の子は脳に重い障害が残り、4年前に死亡しました。
女性と夫は、陣痛促進剤の大量投与や帝王切開の遅れなど医療ミスが原因だとして、医師側に1億円余りの賠償を求めていました。
医師側は「分べんの前にすでに低酸素状態に陥っていて原因が医師にあるとはいえない」などと争っていました。
27日の判決で、京都地方裁判所の藤田昌宏裁判長は「医師は特に理由もなく、多量の陣痛促進剤や高濃度の麻酔薬を投与するなど注意義務違反があった」として医師の過失を認めました。
一方で、「脳障害の原因が医師の過失だとは認められない。両親の割り切れなさは想像に難くないが、因果関係は不明と言わざるをえない」として、訴えを退けました。
「ふるき産婦人科」は、このほか無痛分べんのミスで子どもや母親に重い障害が残ったとして2件の裁判を起こされていて、現在、診療を休止しています。
判決のあと女の子の両親の代理人を務める中田祐児弁護士は記者会見で、「医師の過失を認めたのに障害の原因とは認めないのは、はなはだ不本意で、両親と相談して控訴したい」と話しました。
また、母親は弁護士を通じ、「判決内容に納得できません。控訴して、因果関係の有無について争いたいです」というコメントを出しました。
判決について、医師側の代理人が所属する弁護士事務所は「守秘義務があるためコメントは差し控える」としています。」


 この医院をめぐっては、別の2家族が、無痛分娩や帝王切開の際の麻酔により母子が重い障害を負ったとして提訴し、京都地裁で審理が続いている。(徳永猛城)」


報道の件は,私が担当したものではありません.

過失を認めて,因果関係を否定する判決は,医療事件では少なくありません.
合理的な理由がなく多量の子宮収縮薬や高濃度の麻酔薬を投与し分娩監視装置をつけたのは1度だけで再装着しなかったなどの注意義務違反を主張したのであれば,因果関係認定は難しくなるように思います.
例えば,検査義務違反を過失にする場合,検査していれば結果が回避できたこと(あれなければこれなしの因果関係)の立証は,検査記録がないため,成功しない確率が高くなります.
弁護士によって考え方はいろいろでしょうが,私は,医療事件では,因果関係の認められる可能性の高い過失にしぼって主張立証することが必要ではないか,と思っています.



谷直樹

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by medical-law | 2018-03-28 12:43 | 医療事故・医療裁判